最近、テレビや雑誌で、「自律神経」という言葉をよく見聞きします。
高血圧、ストレス、睡眠、腸内環境など、健康に関する様々なことに「自律神経」が関わっているのです。
さて、この「自律神経」とは、一体何なのでしょうか?
なんとなく分かっているようで、よく分かっていない「自律神経」について以下の内容で解説します。
- 神経系
- 自律神経
- 交感神経・副交感神経の働き
神経系
神経系は、中枢神経系と末梢神経系に分類され、私たちの身体をコントロールしています。
中枢神経系は、脳と脊髄で、情報の処理・判断などを行っています。
末梢神経系には体性神経と自律神経があり、身体内や外界からの情報を中枢に伝え、そして中枢からの命令を末梢に伝えています。
体性神経は、私たちの感覚情報を中枢に伝え、動きを随意的に生じさせるよう筋肉に命令を送っています。
一方、自律神経は、内臓の感覚情報を中枢に伝え、内臓や血管を不随意的に調節する命令を送っています。
自律神経
・中枢への入力
内臓の感覚は、「お腹がいっぱい」「胃がキリキリ痛む」など、意識にのぼる場合もありますが、意識されない感覚もあります。
絶えず内臓の状態をモニターして中枢に送っています。
・中枢からの出力
内臓や血管の平滑筋、腺、心筋を交感神経と副交感神経でコントロールしています。
平滑筋とは、内臓や血管にある筋肉で、手足にある骨格筋とは異なるタイプの筋肉です。
食べた物を消化吸収のために順次移動させていったり、血管の径を調節するのが平滑筋の役割です。
これらは、私たちが随意的にコントロールしているのではなく、不随意的に行っています。
心臓にある筋肉は、心筋と呼ばれ、平滑筋とは異なります。
手足にある骨格筋と似た構造をしているのですが、心筋は自律神経でコントロールされています。
すべての動きを随意的にコントロールするのは大変です。
ですので、このように状況に適したコントロールを不随意的にしてくれるのはとても都合のよいシステムですね。
ただ、不随意だけに、自律神経の不調で体調が崩れた際に、その対応が難しいというデメリットもありますが。
交感神経・副交感神経の働き
・二重支配
自律神経はいろんな臓器をコントロールしています。
基本的に、それぞれの臓器は交感神経と副交感神経の両方の支配を受けています。
これを二重支配と言います。
・拮抗作用
交感神経は、臓器の機能を促進させ、反対に副交感神経は抑制します。
このように反対の働きを拮抗作用と言います。
車のアクセルとブレーキに例えられます。
臓器によっては拮抗作用を示さないものもあります。
・緊張性支配
自律神経は臓器に常に命令を送り続けています。
体性神経では、必要な状況以外は命令が送られません。
これも体性神経とは違う自律神経の特徴となります。
例えば、血管の平滑筋では、常に交感神経から命令を受け、緊張状態を維持しています。
この緊張の度合いを調節することで、血管の径を調節して、血液の流れる量をコントロールしています。
このため、緊張性支配といいます。
交感神経と副交感神経の両方の緊張度合いで、その強い方でそれぞれの臓器の活動が決定されます。
・交感神経活動は戦闘態勢
交感神経は、闘争か逃走か(Fight or Fly)の反応を担っています。
外敵が現れた時に、戦うか逃げるか?、そんな危機的な状況での身体をコントロールしています。
瞳孔の散大、発汗、心臓の拍動数の増加、気管支の径の増加、などの反応が同時に生じます。
瞳孔を散大させることで、目からの情報量を増やし、状況の把握に役立ちます。
発汗は、腋や手の平などに限定し、精神性の発汗と呼ばれます。
手のひらの汗は、物を掴んだりする際に役立つと考えられます。
気管を太くして呼吸量を増大させ、心臓の拍動数を増加させることで、筋肉に多くの酸素を送るようにできます。
また、活動している筋肉に優先的に血液が流れるように血管の径も調節されています。
このような身体の反応を交感神経は同時に、そして瞬時に生じさせることができるのです。
・副交感神経はリラックス
副交感神経は、戦闘態勢で高まった臓器の機能を低下させます。
安静時のリラックスした状態に身体を戻す訳です。
常に戦闘態勢では、身体が持ちません。
リラックスモードをしっかりつくることが大切です。
慢性的なストレス状態は、交感神経の活動が活発なままです。
交感神経が高まったままでは、スムーズに睡眠に入ることができません。
いかに副交感神経を働かせ、リラックスできるかが、現代では大きな課題となっていると言えます。
まとめ
- 自律神経は、交感神経と副交感神経より成り立っている。
- 内臓や血管の平滑筋、腺、心筋を交感神経と副交感神経でコントロールしている。
- 各臓器は、交感神経と副交感神経から支配されている(二重支配)。
- 交感神経は促進、副交感神経は抑制で、拮抗的に支配している(拮抗支配)。
- 自律神経は常に臓器に命令を送り(緊張支配)、その程度の大小で臓器の作用が決まる。
- 交感神経は戦闘態勢、副交感神経はリラックスモードにする。
自律神経は、意識的にコントロールできません。
ですから、副交感神経の活動を高めたくてもなかなか難しいです。
ただ、自然との触れ合い、呼吸法、皮膚への優しい触刺激など、副交感神経を間接的に高めるアプローチもあるようです。
リラックスする時間を大切にして、健康的に過ごしたいですね。
<参考資料>
- 人体の正常構造と機能、第4版、坂井・河原編著
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