私たちの身体には筋肉があり、それによって動くことができます。
骨にくっついて、身体を動かす筋肉は骨格筋と呼ばれます。
筋肉を収縮させ、骨を動かし、歩いたり、走ったりできるという訳です。
骨格筋は筋線維とう髪の毛ほどの太さの細胞が束になった組織です。
では、この骨格筋はどうやって動いているのでしょうか?
以下の内容で解説していきます。
筋の動く仕組み
骨格筋は、脳や脊髄からの命令で動くことができます。
命令が無い限り、勝手に動くことはありません。
命令を伝えているのが神経で、脳や脊髄から神経同士が命令を受け渡し、最終的に脊髄の前角という所にある神経が筋線維に伝えます。
この最終的に筋線維に命令を伝える神経のことを、運動神経と言います。
この命令自体は電気信号で、私たちは電気で動いているとも言えます。
運動神経は1本1本の筋線維に命令を送っています。
運動神経と筋線維のセットを「運動単位」と言います。
一つの運動神経が多数の筋線維に命令を送ることで、効率よく命令を伝えることができるようになっています。
力の調節
私たちは、状況に応じて力の調節を瞬時に行います。
投げられた生卵を割らずにキャッチできるよう、また、鉄の塊を持つ時は落とさないよう力を調節します。
この力の調節は、3つの方法で行われていると考えられています。
- サイズの原理
- 発火頻度
- 運動単位の動員数
・サイズの原理
運動単位は、次の3つのタイプに分類されます。
- Sタイプ :遅筋線維が含まれ、小さな力しかでないが長く出し続けられる
- FRタイプ :中間筋線維が含まれ、SとFFタイプの中間の性質を持つ
- FFタイプ :速筋線維が含まれ、大きな力はでるが疲労しやすい
中間筋線維は、速筋線維と遅筋線維の間の性質を持った筋線維です。
私たちが力を出す時、まずSタイプの運動単位が使われ、それからFRタイプ、FFタイプの順になります。
これをサイズの原理といいます。
なぜ、「サイズ」かというと、各運動単位の神経細胞の大きさの違いに由来しています。
Sタイプの神経細胞は小さく、FRタイプ、FFタイプと順に大きくなります。
小さい神経細胞のSタイプから、中間のFRタイプ、そして大きい神経細胞のFFタイプと、神経細胞の大きさ(サイズ)で使用される順番が決まっています。
・発火頻度
神経から命令である電気信号が送られます。
電気信号が生じることを発火と言い、これがどのくらいの頻度で筋線維に送られるかで力の調節が行われます。
小さい力の時は、命令の発火頻度が少なく、大きな力を出すためには命令の発火頻度が多くなります。
つまり、命令の発火頻度で、筋線維1本1本の出せる力を調整します。
・運動単位の動員数
ある運動に参加する運動単位の数のことを、運動単位の動員数といい、これで力の調節ができます。
参加する運動単位の数が少ない場合は、そこに含まれている筋線維が少なく、小さな力しか出ません。
大きな力を出す場合は、運動単位の数を増やします。
このサイズの原理、発火頻度、運動単位の動員数が複雑に関与しながら、状況に適した力の発揮が可能となります。
そのためには、生まれてから、我々は数々の試行錯誤を繰り返しながら、「状況に適した」ものを学習していきます。
力を入れ過ぎて、おもちゃを壊してしまった。
文字を書くのに力を入れ過ぎて紙が破れてしまった。
などなど、数々の経験をしているはずです(記憶には残っていませんが)。
そして、成長する中で、いろいろな力の調節ができるようになってくるのです。
まとめ
- 神経細胞と筋線維のセットのことを運動単位と言う。
- 運動単位には、Sタイプ、FRタイプ、及びFFタイプがある。
- 力が発揮される際は、S→FR→FFタイプの順に使われ、これをサイズの原理という。
- 神経細胞の発火頻度の大小が力の大小と関係する。
- 参加する運動単位の数の大小と力の大小と関係する。
- サイズの原理、発火頻度、運動単位の動員数の3つが複雑に関連しながら、状況に適した力発揮が可能となる。
よく、「運動神経がいい」といいます。
これは、筋線維に最終的に命令を伝える「運動神経」の働きが良いという意味ではありません。
世の中で言われる「運動神経がいい」というのは、まだ良くわかっていません。
しかし、力の調節機能が優れていることは、「運動神経がいい」ことと関連している重要な要素だと思います。
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