運動は、諸刃の剣に例えられます。
健康に対して良い効果があることは、ご存知の方も多いと思います。
一方で、身体に対してストレスをかけることになり、思わぬ事故に見舞われるリスクがあることはあまり知られていません。
「昔はバリバリ動けていた!」のイメージで運動をやってしまいがち。
残念ながら、昔と今では、体力は大きく乖離しているのです。
そして、身体内のいろんな臓器も昔ほど良好な状態ではないのです。
ですから、運動をする時には十分な配慮が必要です。
その配慮の一つが血圧です。
運動は血圧を上昇させますので、中高齢者は特に注意したいですね。
というのも、中高齢者には血圧の高い人が多いからです。
ただ、「運動」とひとくくりにしてはいけません。
運動の種類や強度などによって、血圧の上がり方が異なるからです。
中高齢者が運動を実践する場合は、運動中の血圧の上がりにくい条件で実施することが必要です。
今回は、運動と血圧について以下の内容で解説します。
- 運動の種類・強度と血圧
- レジスタンス運動時の注意点
運動の種類・強度と血圧
・血圧
血圧は、血液が血管を外側に押し広げる圧力のことです。
そして、心拍出量と末梢血管抵抗で血圧は決定します。
心拍出量は、心臓から送り出される1分間あたりの血液量のことです。
末梢血管抵抗は血管の直径が細いほど、そして血管を流れる血液量が多くなるほど、血管を押し広げる圧力は大きくなるのです。
・動的運動と静的運動
動的な運動は、筋肉の収縮・弛緩が交互に、そしてリズミカルに生じますので血圧は上がりにくいことが知られています。
ウォーキング、ランニング、サイクリングなどは動的運動に分類されます。
一方、静的運動は、筋肉がしばらく収縮したままの状態が続くため、血管が押しつぶされたままになり血圧が上がりやすくなります。
レジスタンス運動、いわゆる筋トレが静的運動の例です。
・強度
強度が強いほど、たくさんの血液、つまり心拍出量が筋肉で必要になります。
さらに、強度が強いほど筋肉が強く収縮するため、血管がつぶされる程度も大きくなります。
このため、強度が高くなるほど血圧は上がりやすくなります。
以上から、血圧を上げにくい運動として、以下が推奨されます。
レジスタンス運動時の注意点
有酸素運動で得られる効果とレジスタンス運動で得られる効果は異なります。
これは、トレーニングの特異性の原理といいます。
筋肉量・筋力を維持・向上させるにはレジスタンス運動も行う必要があるのです。
加齢とともに、筋肉が衰えていくためです。
ですから、レジスタンス運動を実施する際には以下の点に気をつけるようにしましょう。
- 息を止めない
- 心臓の位置
- 軽い負荷
・息を止めない
大きな力を出している時、息ってどうなってますか?
意識していないと、息は止まっていると思います。
息を止めて腹腔内圧が高まると、筋力が発揮しやすくなります。
体幹が安定するとためだと言われています。
腹腔内圧が高まると、一時的に静脈還流量が減少するため、血圧が上昇します。
・心臓の位置
運動中に心臓の位置が低くなる姿勢では、心臓に戻る血液が増えます。
これを静脈還流量と言います。
心臓が低い位置にあれば、重力の影響が少なくなり、血液が楽に心臓に戻れるようになるのです。
急な坂を登るより、平坦な坂の方が楽なのと同じです。
静脈還流量が増えると、心臓に戻る血液量が増え、心臓が膨らみます。
心臓は、部屋が膨らむほど強く収縮する性質があります。
より強く送り出された血液によって血圧が上昇してしまうのです。
ですから、立位、椅座位、座位で行う種目を優先させましょう。
寝転がって行う種目は、血圧が高めの人は注意が必要です。
・軽い負荷
重い負荷では、より大きな筋力を発揮します。
前述しましたが、筋肉がより強く収縮することよって、血管がより圧迫されることになります。
また、重い負荷では動作がゆっくりになり、筋肉の収縮時間が長くなります。
このため、血管がつぶされている時間も長くなるため、これも血圧の上昇につながるのです。
ですが、筋トレであっても、負荷を軽くして回数を増やすような工夫で血圧の上昇を抑えることも可能です。
まとめ
- 運動の種類と強度で血圧は変わる。
- 動的運動でも血圧は上昇するが、静的運動よりもその上昇は少ない。
- 静的運動は、血圧が上がりやすいので、血圧が高めの人が実施する際には注意が必要である。
- 静的運動を実施する場合は、息を止めず、立位・椅座位・座位で行う種目を優先させ、軽めの負荷で実施する。
有酸素運動は、継続することで降圧効果があります。
ですから、血圧が高めの人は、まずは有酸素運動を実践することがオススメです。
しかし、いかなる運動も、血圧は上昇します。
ですから、血圧が高めの人は、運動をする前にお医者さんに相談するようにしましょう。
コメント