通勤は車。
ドアツードアでほとんど運動はしない。
こんな不活動な生活を送っている人も多いのでは?
その結果、身体のいろんな機能が低下していきます。
機能の低下は、少しずつ進行するので、普段はあまり気づきません。
しかし、ある時、「えっ!?」となるのです。
このように不活動で低下する機能の一つに呼吸があります。
呼吸とは、空気中から酸素を取り込み、体内でできた二酸化炭素を排出する働きのことです。
私たちが生きていく上でとても大切な働きですね。
日常生活の中で、筋肉を激しく使うことがなければ、酸素をたくさん取り込む必要がありません。
そのため、呼吸に関わる筋肉があまり活動しません。
そうすると、これらの筋肉の機能が低下します。
さらに、老化とともに、手足と同様に呼吸に関わる筋肉も衰えていきます。
このため、不活動な中高齢者では呼吸の予備力が少なくなるのです。
予備力とは、余力のことで、最大に空気を出し入れできる能力に依存します。
予備力が小さくなると、少し身体を動かしただけでも息苦しく感じるようになります。
こうなると、ますます身体を動かさなくなり、さらに不活動に・・・
負のスパイラルですね。
そうならないためにも、手足の筋肉と同じように、呼吸筋を鍛えることも大切です。
今回は以下の内容で、呼吸筋とその鍛え方を解説します。
- 加齢とともに衰える呼吸機能
- 呼吸筋とは
- 呼吸筋を鍛える
加齢とともに衰える呼吸機能
肺気量分画
まずは呼吸の区分けについてのお話から。
下の図を見て下さい。
これは、呼吸の変化をグラフにしたものです。
吸う(吸気)と線は上へ、吐く(呼気)と下に変化するように描かれています。
1回吸って、吐く空気の量のことを「1回換気量」と言います。
安静時、私たちは空気をめいっぱい吸っているわけではありません。
安静時の呼吸から、さらに吸い込める空気の量を「予備吸気量」と言います。
一方、吐く方も同じで、まだ余力がある状態です。
安静状態から、さらに吐き出せる空気の量を「予備呼気量」と言います。
空気をめいっぱい吐き出しても、身体の中の空気はゼロにはなりません。
この時、身体内に残っている空気の量を「残気量」と言うのです。
残気量は、呼吸に関わらない空気の量になります。
図中の()内の数値は、それぞれのおおよその量になります。
実際には、年齢、性別などで数値は変わりますので、あくまで目安です。
これらは、スパイロメータという機器で計測できます。
健康診断などで、息をめいっぱい吐き出す測定をした記憶のある人。
その機器がスパイロメータです。
老化による肺分画
老化とともに、一回換気量は変化しないのですが、予備吸気量、予備呼気量は低下していきます。
その結果、最大で吸い込み・吐き出せる空気の量である肺活量は、老化とともに低下するのです。
肺は、呼吸筋によって広げたり、縮めたりしています。
呼吸筋の機能が低下すれば、このように吸い込みや吐き出しできる量が低下してしまいます。
また、同様の理由で、残気量が増加してしまいます。
体内の空気を十分吐き出せる呼吸筋の力が無くなって、体内により多くの空気が残ってしまうのです。
残気量は、呼吸に関わりません。
酸素と二酸化炭素の交換に関わらない空気が増えてしまうのは、身体にとってデメリットと言えます。
呼吸筋とは
肺自体には動く機能はなく、肺の周りにある筋肉が代わりに動かしています。
下の図が呼吸に関わる筋肉です。
呼吸筋は、横隔膜、胸郭を構成する肋骨に付いている筋です。
呼吸筋をサポートする補助呼吸筋として、斜角筋、胸鎖乳突筋、腹筋群があります。
低強度の運動までは、呼吸筋が主に働きます。
(「呼吸の科学」、石田著、ブルーバックス、講談社、2021年)
しかし、中〜高強度の運動では、呼吸筋に補助呼吸筋が加わります。
まさしく「肩で息をする」ことになります。
これらの呼吸筋の機能が、取り込み、吐き出せる空気の量を決定するのです。
呼吸筋は手足にある筋肉と同じです。
呼吸筋は使わなければ衰え、老化でも衰えていくのです。
呼吸筋を鍛える
大きな呼吸
呼吸筋・呼吸補助筋を動かすように大きな呼吸を実践してみましょう!
やり方は以下の通り。
1)ゆっくり大きく空気を吸い込み、めいっぱい吸い込んだところで少しキープ。
この際、胸を大きく広げ、お腹を膨らませることを意識する。
2)今度は、ゆっくり空気を吐き出し、一滴残らずに、めいっぱい吐き出す。
この際、胸を縮め、お腹をへこませることを意識する。
3)1)〜2)を3回ほど繰り返し、3回目については最後の2)の際に、吸い込んだ空気を一気に吐き出す。
一気に吐き出す際は、多くの空気を一瞬で吐き出すことに集中します。
回数が多いと過換気になることもあるので、3回程度でやめるようにしましょう。
過換気では、二酸化炭素が過剰に吐き出されるために血液がアルカリ性に傾きます。
このため、気分が悪くなったり、めまいがしたりします。
3回程度でもめまいなどするようであれば、無理にやらないようにしましょう。
運動
運動では、酸素をたくさん筋肉に運ぶために、呼吸が速くなります。
この際、呼吸筋・補助呼吸筋が頑張って動きます。
これが呼吸筋のトレーニングとなるのです。
運動しないと、安静状態では、呼吸筋・補助呼吸筋はあまり活動しません。
それが、呼吸筋・補助呼吸筋の機能低下につながります。
まとめ
- 呼吸機能は、不活動と老化で衰える。
- 一回換気量は変化しないが、肺活量が低下し、呼吸に関与しない残気量が増える。
- 呼吸は呼吸筋と呼吸補助筋によって行われている。
- これらの筋肉を鍛えることで、呼吸機能の低下を防ぐことが大切である。
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