運動時の飲料水の摂取 〜エネルギー補給〜

健康・運動

マラソンでは、寒い時期でも給水しますよね。なぜですか?

寒い時期でも、ある程度の水分が失われます。その補給と、そしてエネルギー補給の目的があります。 

暑い時期は発汗が激しいため、飲料水を摂取することが必須なのはわかります。

気温がそれほど高くない時や寒い時期であっても飲料水を摂取するのはなぜでしょうか?

運動中の飲料水摂取の目的には2つあります。

  • 身体の水分量の維持
  • エネルギーの補給

汗の量が多く、水分の損失を補う必要がある暑い時期には、身体の水分量の維持が大きな目的になります。

一方、水分の損失がそんなにない状況では、エネルギーの補給が大きな目的となります。

2つを両立させられないのでしょうか?

実際には、どちらかを優先すると、もう一方は妥協せざるを得ないようです。

今回は、エネルギーの補給について、以下の内容で解説します。

  • 長時間運動のパフォーマンスの制限因子
  • 糖質の摂取
  • 事前チェックの必要性

長時間運動のパフォーマンスの制限因子

マラソンのような長時間にわたる運動では、以下の要因が運動パフォーマンスを制限します。

  • 発汗による脱水
  • グリコーゲンの枯渇

・発汗による脱水

発汗による脱水は、体液成分の変化、体温の上昇、血液量の減少などを引き起こし、運動パフォーマンスを低下させます。

詳しくは、以下のブログを参照してください。

・グリコーゲンの枯渇

長時間運動では、糖質と脂質が筋肉を動かすために必要なエネルギーを作り出しています。

脂質は私たちの身体に多量に蓄積されているので、脂質だけを考えると数時間の運動でエネルギー不足にはなりません。

糖質は、脂質と比較して少ない酸素でエネルギーを作り出せ、そして、出てくるエネルギー量も脂質より多いのです。

ですから、長時間運動であっても糖質は主要なエネルギー源なのです。

しかし、その糖質の貯蔵量は脂肪ほど多くありません。

糖質は、筋肉と肝臓でグリコーゲンという形で貯蔵されています。

その貯蔵量は、筋肉で250g、肝臓で100g程度ですが、上限があるためたくさんは貯蔵できません。

そのため、長時間運動では、筋肉の糖質の量は減少し、枯渇してしまうこともあります。

脂肪が多量に貯蔵されているんだから、糖質が枯渇しても問題ないと考えてしまいますよね。

実はそうではないのです。

エネルギー源として脂質を使用する場合においても糖質が必須なんです。

また、筋肉だけでなく、肝臓に貯蔵されている糖質が枯渇すると、血液中の糖質の量である血糖値が低下した状態である低血糖になります。

低血糖になると、筋力低下、めまい、吐き気、意識障害などの症状や中枢性疲労を引き起こします。

このように、筋肉や肝臓における糖質の貯蔵量は競技パフォーマンスに直結するのです。

ですから、体内の糖質は枯渇しないようにしないといけません。

そのためには、外から糖質を摂取することが大切です。

糖質の摂取

吸収の面から、液体による摂取が効率的です。

飲料水に糖質を含ませるのです。

この際、飲料水にどのくらいの糖質を含ませるか、そして糖質の種類は何にするのかが重要になってきます。

これらで、小腸での吸収の速度が変わってきます。

ですから、摂取のタイミングでこれらを調整する必要があります。

糖質の摂取には2つのタイミングが考えられます。

  • 運動前の糖質液摂取
  • 運動中の糖質液摂取

・運動前の糖質液摂取

運動前では、糖質の種類に注意して摂取してください。

運動開始30〜40分前に高濃度のグルコースを摂取すると、血液中にインスリンというホルモンが増えます。

このホルモンは、血液中の糖質を筋肉や肝臓に貯蔵する働きがあります。

そのため、運動開始時に低血糖を引き起こす可能性があるのです。

ですので、この時間帯で摂取するのであれば、低濃度のグルコースか、同じ糖質でもフルクトースを摂取しましょう。

運動前に効果的な糖質の補給ができれば、血糖とインスリンの濃度が一定に保たれ、運動中の筋肉のグリコーゲンを節約できる効果が期待できます。

・運動中の糖質液摂取

運動中の場合、高濃度のグルコースを摂取してもインスリンは増加しないため、低血糖の心配はありません。

ただ、糖質の濃度は、熱中症の危険性とのバランスを考えて決定する必要があります。

高温多湿の環境下であれば水分摂取を優先し、低温で低濃度の糖質を含んだ飲料水がよいです。

高濃度の飲料水では、胃排出速度が遅くなり、水分の吸収が遅くなってしまいます。

一方、脱水が心配ない状況では、高濃度の糖質を含む溶液で良いでしょう。

高濃度の糖質の飲料水による胃排出速度の低下が、逆に、肝臓や筋肉へゆっくりと安定した糖質の供給を可能にするのです。

ただ、高濃度の糖質を含む飲料水では、胃の不快感を示す例もあるようですので注意が必要です。

運動中に効果的な糖質の補給ができれば、筋肉のグリコーゲンを温存でき、持久的運動のパフォーマンス向上に有効です。

飲料水摂取の注意点

● 運動開始30〜40分前の摂取:低濃度のグルコースかフルクトースの飲料水

● 運動中の摂取       :高濃度のグルコースで良いが、胃の不快感に注意

事前チェックの必要性

環境条件、運動強度、運動時間などによって、飲料水の内容は変わってきます。

また、人によって糖質の吸収やインスリンの応答が異なります。

大切な試合がある場合は、普段の練習の中でいろんな飲料水を試し、最適な飲料水を見つけておくことをおすすめします。

まとめ

  1. 長時間運動の場合、脱水の危険性がない状況では、飲料水から糖質の摂取することでエネルギーの補給ができる。
  2. 運動開始30〜40分前に糖質を摂取する場合、高濃度グルコースではインスリン分泌が増え低血糖になる危険性があるため、低濃度グルコースかフルクトースを摂取する。
  3. 運動中は、高濃度のグルコースで良いが、胃の不快感に注意する。
  4. 普段の練習で様々な飲料水を試し、最適なものを見つけておく。

競技者の場合、飲料水の良し悪しで運動パフォーマンスが決まってしまうこともあります。

たかが飲料水、されど飲料水です。

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