長時間の座っていることが身体に悪い影響を及ぼすことが明らかになってきました。
具体的には以下のような悪影響が報告されているようです。
運動をしているから、座位時間が長くても心配ないと思っている人もいるかも知れません。
実は、そうではないんです。
いくら運動を実践していても、座位時間が長ければ座位のリスクを避けることはできません。
でも、そんなに座っている時間ないから。
本当にそうでしょうか?
日本人の座位時間は世界の中でも長いことが知られています。
座位時間の長さは、職種で大きく変わります。
問題なのは、デスクワーカーということになります。
日本のデスクワーカーは1日10時間以上座っているそうです。
勤勉な日本人なので、労働時間が長いことも関係しているかも知れませんね。
ただ、休日に関しては、職種によらず9時間も座っている状況です。
さて、座っていることが何故いけないのでしょうか?
このことについて以下のように解説します。
- 長時間の座位が身体に及ぼす影響
- 座位時間を短くする工夫
長時間の座位が身体に及ぼす影響
座っていると筋肉が動かない
座っている状態ですと、身体の筋肉の多くは活動していません。
座位姿勢を保つための筋肉ぐらいしか活動していません。
特に、下肢の筋肉はほとんど活動していない状況です。
立位では、姿勢維持のために、下肢だけでなく体幹など多くの筋肉が活動します。
重力があるため、まっすぐ立つのも簡単ではないのです。
筋肉が活動することには、目的とする動作を引き起こすだけでなく、次の重要な役割があります。
- 骨への刺激
- マイオカインの分泌
骨への刺激
筋肉は、骨に付着しています。
筋肉が収縮すると、付着部位が引っ張られて骨に刺激を与えるのです。
この刺激が骨を強くするのです。
骨折して動かないように固定していると、骨も細くなってしまうのです。
長時間座っていると、骨への刺激が少なくなりますから、骨には良い状態ではありません。
マイオカインの分泌
筋肉から分泌されるたんぱく質を総称して「マイオカイン」と呼ばれます。
マイオカインの中には、以下のような作用をするものがあります。
- 筋肉量の調節
- 糖・脂質代謝の改善
- 骨の強化
- 発ガンの抑制 など
マイオカインは筋肉が収縮することによって分泌されます。
長時間の座位は、マイオカインの分泌には良い状況とは言えません。
ずっと座っていると足がむくむ
「エコノミークラス症候群」という言葉を知っている方も多いと思います。
長時間座っていると、下肢の静脈に血液が溜まった状態になります。
この溜まった血液は、水分が血管の周りに漏れ出て、足のむくみの原因となります。
また、血液は水分が抜けると、濃縮されます。
このような状況では、「血栓」と言われる血液の固まりができやすくなります。
この血栓が、動き始めた時に血流に乗って肺にいき、肺動脈の詰まりを引き起こします。
これは「肺血栓症」と呼ばれます。
デスクワークで長時間座っていることが多い場合、これと同様のことが生じる可能性があります。
では、なぜ下肢の静脈に血液が溜まってしまうのでしょうか?
下肢の静脈血は流れが穏やかで、また心臓とは逆方向に重力が作用するため血液が心臓に戻りにくくなっています。
このため、下肢の静脈に血液が溜まりやすくなってしまうのです。
では、どうやって下肢の静脈血は心臓に血液を戻しているのでしょうか?
ここで大活躍しているのが、足の筋肉の収縮です。
足の筋肉が収縮することで、筋肉の間にある静脈が押され、血液に心臓方向への流れが生まれるのです。
これは、筋肉によるポンプ作用といいます。
椅子に座った状態では、この足の筋肉の作用がなくなるため、下肢の静脈に血液が溜まってしまうのです。
立っているだけで、座っているだけよりもエネルギー消費量が少し高い
安静時を基準として、ある活動がどの程度エネルギー消費量があるのかを表したのがメッツです。
立位はおおよそ1.8メッツ程度のようです。
座位でのデスクワークでは、安静の1メッツに近い状態だと言えます。
ですので、少しでも立位の状態を作ることが、エネルギー消費量の面からもメリットがあります。
座位時間を短くする工夫
立ち上がる時間を設ける
定期的に立ち上がる時間を設けることが大切です。
仕事に集中していると忘れがちですので、携帯のアプリを活用して立つ時間を知らせるなどの工夫をしてみましょう。
時間としては、30分とか、60分ではいかがでしょうか?
適度な休憩で集中力がアップします。
また、座って考えるよりも、歩きながら考えたほうが良い発想が生まれたり、考えがまとまったりします。
いっそのこと立って仕事をする
立位で仕事をするのも推奨されていますね。
立位用のデスクも販売されていますので、購入するのも良いですね。
余分な出費をしたくないという方は、身の回りのものを活用する方法もあります。
ラックとかを机の上において、作業する高さを立位に調節することもできると思います。
また、いっそのこと会議も立ってやるのもいいですね。
とかく、会議は長くなりがち。
立位でやれば疲れるので、短時間で終われます。
この他、いろんな工夫ができそうですね。
まとめ
- 座位時間が長いと、我々の身体に悪い影響を及ぼす。
- 日本人は、世界的にも座位時間が長く、特にデスクワーカーは注意が必要である。
- 座位では多くの筋肉が動いておらず、骨への刺激、筋肉が動くことで分泌される有用な物質が得られない。
- 血液が下肢の静脈に滞留しやすく、血栓などを生じさせる可能性がある。
- 日頃から、定期的に立つ、立って仕事をするなどの工夫が必要である。
参考文献
- ターザン No.849、2023年2月9日
- 「エコノミークラス症候群と呼ばれる病態について」、https://www.aeromedical.or.jp/pilot/pilot0103.htm
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