運動中・後の高濃度酸素の吸入

健康・運動

運動の直後に酸素を吸っている人がいますが、あれ効果があるんですか?

状況により、ある程度の効果は期待できますが、劇的な効果はないようです。

激しい運動を行うと苦しいですよね。

そんな時、酸素がたくさん吸えれば楽になるんじゃないかと思います。

ところが、状況によりある程度の効果はあるようですが、高濃度の酸素を吸っても劇的な効果は期待できないようです。

私たちの身体は、高濃度の酸素を吸わなくても、すぐに十分な酸素が取り込める状態になっているからです。

今回は、運動後の酸素吸入について以下の内容で解説します。

  • 酸素の運搬
  • 血液中の酸素の量
  • 運動中の高酸素吸入
  • 運動後の高酸素吸入
  • 高圧酸素の吸入

酸素の運搬

私たちの身体は、酸素なしでは生きていくことができません。

その酸素は空気から呼吸器を通して体内に取り込まれます。

そして、肺胞という場所で空気中の酸素が血液中に取り込まれるのです。

血液中では、赤血球にあるヘモグロビンと結合して運搬されます。

酸素が血液中にそのまま取り込まれることを溶解といいますが、酸素はほとんどがヘモグロビンと結合して運搬されるのです。

ヘモグロビンは、血色素とも言われます。

それは、ヘモグロビンの中に含まれる鉄と酸素が結合すると「赤く」色づくからです。

血の色のもと(素)ということが、血液が赤い理由です。

鉄が錆びると赤くなるのと同じ現象ですが、錆びるというのは酸素と結合することです。

ヒトでは、ヘモグロビンで赤色になりますが、生き物によってはヘモグロビンでないもので酸素を運搬しています。

例えば、イカやタコの軟体動物では、ヘモグロビンの代わりがヘモシアニンというタンパク質になります。

これには銅イオンが含まれており、酸素と結合すると青色になります。

血液中の酸素の量

動脈血中に含まれる酸素の量は、動脈血酸素飽和度と言います。

直接的には動脈血を採血し、その中に含まれる酸素を計測することになります。

これを簡易的に計測できるようにしたのが「パルスオキシメーター」という装置です。

皮膚の上から光をあて、その光がどれだけ透過したかで酸素飽和度を計測します。

指先で簡単に測定できます。

新型コロナウイルスでは、血液中の酸素濃度の低下が重症化の目安となったため、オキシパルスメータの需要が一気に高まりました。

採血せず、指にはめるだけで計測できるなんて、素晴らしい機器ですね。

運動中の高酸素吸入

運動では安静時よりも多くの酸素が必要になります。

そのために、呼吸を早くして多くの酸素を取り込もうとする訳です。

1分間に出し入れした空気の量を換気量と言います。

運動すると、換気量が増加します。

ここで、高酸素を吸入すると、換気量が少なくてすむのです。

酸素を取り込む効率が良くなったということです。

肺は、肺の周りにある呼吸筋を動かして空気を出し入れしています。

呼吸筋は、横隔膜、肋間筋、胸鎖乳突筋、腹直筋、腹横筋、腹斜筋のことです。

これらの筋肉を総称して呼吸筋といいます。

ですので、高酸素を吸入すると、そうでない場合と比べて呼吸筋の働きをセーブできます。

そうなると、同じ運動していも少し楽になる効果は期待できます。

また、激運動で動脈血の酸素飽和度が低下するような運動では、パフォーマンスへの効果も期待できそうです。

ただ、運動中に高酸素を吸入するのはなかなか難しそうですね。

運動後の高酸素吸入

運動後の高酸素吸入では、回復が早まるのかが興味あるところですよね。

前半後半など、途中で休息時間のある競技では、そこでいかに回復できるかが大切になります。

こちらも、高酸素吸入の効果は、行っていた運動の強度によって分かれそうです。

激運動後で、動脈血の酸素飽和度が90%程度まで下がっているようであれば、一定の効果が期待できそうです。

ただ、通常の空気を吸ってもすぐに回復でき、高酸素吸入の方がメリットが高いという訳ではありません。

高圧酸素の吸入

高い圧をかけた酸素を吸入します。

高い圧をかけた酸素は、血液中に溶解する量が数倍に増えます。

通常、酸素はヘモグロビンと結合して運ばれますが、溶解酸素は酸素そのもので運搬されていきます。

そのため、通常では届かない場所に酸素を送り届けることができるようになります。

このお陰で、以下のような効果が期待されています。

  • 関節の炎症の抑制
  • 筋肉痛の軽減
  • 疲労感の軽減

自宅で手軽にできるものではありませんが、高圧酸素カプセルを設置している病院などがあるようです。

まとめ

  1. 運動中の高酸素吸入で換気量が低下し、呼吸の効率が増加する。
  2. 動脈血の酸素飽和度が低下するような激運動中では、高酸素吸入によりパフォーマンスの向上が期待できる。
  3. 運動後では、激運動により動脈血の酸素飽和度が低下している状況では、高酸素吸入で回復が早まるが、通常の空気でも十分回復できる。
  4. 高圧酸素は、血液中に酸素を溶解させて運搬し、関節の炎症や筋肉痛・疲労感の軽減への効果が期待される。

回復を早めることは、アスリートだけでなく私たち一般人でも大切なことです。

これを、何か商品に頼るとそれに依存してしまいます。

私たちが本来備えている回復力を最大限に引き出せるといいですね。

自分の身体の内なる声に耳を傾ける必要があるかもしれません。

<参考文献>

・「呼吸の科学」、講談社ブルーバックス、石田著、2021

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