高地トレーニング

健康・運動

どうしてマラソン選手は山の上でトレーニングするのですか?

酸素を運ぶ能力を高めるためです。

マラソン選手など、長距離系のアスリートは、標高の高い山でトレーニングをすることが知られています。

オリンピック前などは、この手の報道をよく見かけます。

わざわざ行くんだからパフォーマンスを向上させる何かがあることはわかりますよね。

では、どんなことを期待して、選手はわざわざ過酷な環境で練習をするのでしょうか?

この点について以下の内容で解説します。

  1. 高地とはどんな場所
  2. 高地トレーニングのメリット・デメリット
  3. 新しい方法

1.高地とはどんな場所

標高2000〜2500m程度の所を高地と言うようです。

低地は標高1300m程度で、低地と高地の間は準高地と呼ばれています。

高地では、空気の成分は変わりません。

すなわち、空気の中に酸素は20.93%含まれています。

しかし、気圧が低くなり、空気が少なく(薄く)なりますので、結果的に酸素の量が少なくなります。

また、高度が100m上昇するごとに気温が約0.65℃低下していきます。

気温が低くなると、空気中に含まれる水蒸気量も少なくなりますので、乾燥して脱水症状が生じやすくなります。

高地とは、平地に住んでいる我々には過酷な環境です。

2.高地トレーニングのメリット・デメリット

・メリット

気圧が低くなるために、酸素の量が少なくなります。

マラソン選手がトレーニングを行うアメリカのコロラド州ボルダーの酸素の量は、平地の80%程度です。

ボルダーは標高が1655mで、準高地になります。

このように酸素の少ない状況では、身体は酸素の運搬能力を上げるような適応をします。

重要な適応としては、赤血球数の増加です。

赤血球は、肺で空気から酸素を受け取り、筋肉にそれを運搬します。

マラソンなど長距離アスリートにとって、とても重要な物質です。

酸素が少ないことが刺激となって、腎臓でエリスロポエチン(EPO)というホルモンが放出されます。

このホルモンは、骨髄での赤血球の産生を促進させます。

赤血球数が増えることで、空気中の少ない酸素をより多く血液の中に取り込み、筋肉に運べるようになるのです。

このような状態で、平地に戻ればどうなるでしょうか?

そうです、平地は空気中にたくさんの酸素がありますから、以前より多くの酸素を筋肉に運べるようになるという訳です。

筋肉に多くの酸素を運ぶことができれば、マラソンのタイムなど、長距離系のパフォーマンスの向上につながります。

このようなメリットがあるため、EPOを人工的に摂取しようという悪知恵を働かせる人もいます。

これはドーピングです!

・デメリット

意外とデメリットもあります。

まずは、体調不良です。

ひどいものだと高山病があります。

高山病になると、頭痛、食欲不振、吐き気、疲労、睡眠障害など、大変な状況になってしまいます。

症状は個人差が大きく、あまり症状のでない人もいます。

あと、酸素が少ないため、少し動いただけでも息苦しくなります。

ですので、平地と同じ練習量・質が確保できません。

赤血球数が増えた、いろんな適応は生じますが、平地と同じ練習は無理です。

そのため、筋肉量、そして体重が減ってしまいます。

これは大きな問題点です。

ですから、2000mを超えるような高地だとなかなか練習が難しくなります。

そのため、ボルダーぐらいの準高地が選ばれます。

このデメリットを改善する方法も考えられています。

Living-High Training-Lowというものです。

これは、標高が高いところで滞在し、トレーニングは低地で行うというものです。

高地に滞在し、身体の適応をさせながら、トレーニングでは低地で行い、少しでも質・量をあげようというものです。

これであれば問題はずいぶん解決できます。

3.新しい方法

わざわざ高地に行かなくても平地で同じようなトレーニングができたらいいですよね。

それで考え出された方法が以下のものです。

  • 低圧室
  • 低酸素室・テント
  • 低酸素の空気を吸う

・低圧室

高地と同じ気圧の部屋にする方法です。

ただ、圧力を管理するのが難しく、部屋の気密性を高くしなければならいためコストもかかってしまいます。

・低酸素室・テント

こちらは、気圧は平地のままで、空気に含まれる酸素の量を変える方法です。

こちらであれば技術的には容易になります。

部屋に送り込まれる空気の酸素量を減らし、低酸素室にします。

この中で生活したりトレーニングをすることで、高地と同じ効果を得ようというものです。

さらに、部屋でなくテントを使い、その中を低酸素にするものまで開発されています。

このように、小型な装置で低酸素環境をつくれるようになっています。

これなら、どこでも低酸素環境を持ち運べるという訳です。

まとめ

  • 高地では酸素が少なく、それを補うような身体の適応が起こる。
  • 主な適応としては、赤血球数の増加で、それにより酸素の運搬能力が向上する。
  • 赤血球数が増加した状態で平地に戻れば、より多くの酸素が筋肉に運ばれ、パフォーマンスの向上が期待できる。
  • 高地では、体調不良やトレーニングの質・量の低下などのデメリットもある。
  • 実際に、高地に行かなくても、平地で低酸素トレーニングが可能となっている。

最近では、低酸素トレーニングをアスリートだけでなく、健康づくりにも活用されています。

トレーニングルーム、それ自体が低酸素室になっているような施設もあります。

あるいは、オフィスを低酸素室にも。

近い将来、みなさんも、低酸素環境でトレーニングをするようなチャンスもありそうですね。

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