運動に心拍数をどう利用するのか?

健康・運動

運動を始めたいのですが、心拍数をどう利用すればよいのかわかりません。

安全で効果的な運動を実施するには、心拍数を是非活用して欲しいですね。

少し計算は必要ですが、難しくありませんよ!

運動を安全で効果的に行うためには適切な運動強度が必要です。

そして、運動実施中も運動強度をモニターしておきたいですね。

運動強度は、酸素摂取量でモニターするのがベストですが、実際には難しいです。

そこで、最も手軽に計測できる生体情報である心拍数を利用します。

心拍数を利用する上で、コツもあります。

それは、心拍予備法という方法を活用することです。

今回は、運動強度の設定に心拍数をどのように利用できるのかを以下の内容で解説します。

  • 運動強度と効果
  • 心拍数の利用
  • 心拍予備法(カルボーネン法)
  • 心拍予備法の注意点

運動強度と効果

運動による効果と運動強度の関係は以下の通りです。

運動の効果と強度の関係

  健康づくり: 40〜60%

  体力づくり: 60〜70%

  競技力向上: 70%以上

%の基準は最大酸素摂取量(VO2max)になります。

VO2maxは、酸素を体内どれだけ取り込めるかの最大値を表しています。

この数値が高いほど、有酸素的な能力が高いことを表しています。

生活習慣病の予防・改善を目的とした健康づくり運動では、40〜60%VO2maxの運動強度で実施すればよいのです。

しかし、最大酸素摂取量や運動中の酸素摂取量は計測できません。

そこで、酸素摂取量に変わり、心拍数を活用するのです。

では、40〜60%VO2maxの運動強度にするためには、心拍数をどう設定すればよいのでしょうか?

心拍数の利用

心拍数にも、上限の値があります。

それが最高心拍数(HRmax)です。

HRmaxは、これ以上できない最大限の運動中の心拍数を計測することになります。

計測できないことはないのですが、身体にかなり負担を掛けます。

若い人ならいざ知らず、中高齢者ではリスクが高すぎますね。

そこで、以下の推定式を使います。

 HRmax=220ー年齢 ・・・(式1)

単位は、[拍/分]です。

50歳の人であれば、170[拍/分]という具合です。

では、最大酸素摂取量の50%というのはHRmaxの50%で計算すればよいのでしょうか?

つまり、170✕0.5(50%)で85[拍/分]。

実は、これではダメなんです。

一般人の安静時の心拍数は、60〜80[拍/分]ぐらいです。

ちょっと動いただけで85[拍/分]になってしまいます。

では、どうすればよいのでしょうか?

心拍予備法(カルボーネン法)

心拍数を利用する場合、心拍予備法を使用します。

この方法を提案したカルボーネンさんの名前を冠してカルボーネン法とも言われます。

心拍予備というのは以下のように求められます。

  心拍予備=最高心拍数ー安静時心拍数 ・・・(式2)

安静時心拍数は、生きていく上で最低限必要な血液を送り出すための心臓の拍動数で、これ以下にはなりません。

つまり、運動で変動させられる心拍数が、心拍予備という訳です。

この予備力の範囲で、安静時で0%〜最高心拍数で100%の運動強度と考える訳です。

その結果、心拍予備法から、運動中の目標心拍数は以下の計算式から求められます。

 目標心拍数=(最高心拍数ー安静時心拍数)✕運動強度+安静時心拍数 ・・・(式3)

最高心拍数は、(式1)より推定します。

運動強度は、50%の場合は0.5を入れますので注意してください!

50歳の人(安静時心拍数70[拍/分]とする)の50%の値は、(式3)から120[拍/分]となります。

先程の、85[拍/分]とは大きく異なります。(図)

最高心拍数を用いた方法と心拍予備法の違い

安静時心拍数は、次の要領で計測します。

 1)椅子に座った状態で5分程度安静にする。

 2)親指の付け根にある撓骨動脈で脈を確認する。(写真)

 3)1分間の時間をはかり、その間の脈を数える。

  心拍計がある方は、1)の後の心拍計の数値で良いです。

写真 撓骨動脈の位置

(式3)では、最後に安静時心拍数を足し合わせています。

前半部分は、心拍予備に対する割合を計算しているだけなので、元々ある安静時心拍数を足し合わせてあげないといけないのです。

以下の表は、カルボーネン法の早見表です。

年齢と安静時心拍数から、ご自身の運動中の目標心拍数をおおよその値をイメージしてみてください。

運動中は、この目標心拍数になるようにすれば良いというわけです。

40%VO2maxの目標心拍数
50%VO2maxの目標心拍数
60%VO2maxの目標心拍数

心拍予備法の注意点

%VO2maxは心拍予備法から求めたものと近いことが報告されています。

しかし、心拍予備法にも欠点があります。

運動以外の要因でも心拍数が変動するという性質によるものです。

心臓は、自律神経によって調整されていますから、情動(緊張感など)や疲労度によって心拍数は変化します。

安静時心拍数にも個人差が大きいです。

一般的には、安静時心拍数は60〜80[拍/分]ですが、これだけでも20[拍/分]も違いがあります。

人によっては、病気などの理由がないのに、この範囲を超えた安静時心拍数の人もいます。

もう一つは、最高心拍数はあくまでも推定であるという点です。

実際に計測してみないと最高心拍数はわかりません。

もちろん、予想値が200[拍/分]なのに、実際には220[拍/分]だった、なんてこともあります。

酸素摂取量を直接計測していないので、完全ではないのです。

ただ、現状として心拍予備法が最も精度のよい実施方法です。

限界を理解しつつ活用していくことが大切です。 

次のような感じです。

 ・心拍予備法で目標心拍数をもとめる。

 ・計算した目標心拍数で実際に運動し、その際の感覚を確認する。

 ・健康づくりの運動で、50%の運動強度になるように計算したのに、あきらかに「きつい!」と感じるようであれば、躊躇なく「少しきつい」感覚になるよう運動強度を変更する。

この辺りの塩梅が難しいですよね。

そんな場合は、スポーツクラブなど専門家のいるところで運動を実施することをオススメします。

まとめ

  • 運動強度の設定・モニターには心拍数が利用できる。
  • 心拍予備法で、目的に合った運動強度になるよう目標心拍数を算出する。
  • 心拍数のもつ特性から、心拍予備法から算出される目標心拍数が適切でない場合もあるので注意が必要である。

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