マラソンでは途中で給水ステーションがありますよね。なぜですか?
飲料水を摂取することで、パフォーマンスの低下を防ぐ目的があります。
マラソンの中継などを見ていると、途中で給水場所があります。
暑い時期は飲料水を摂取することが必須です。
気温がそれほど高くない時でも飲料水を摂取することが大切になります。
運動中、飲料水を摂取する目的は2つあります。
- 身体の水分量の維持
- エネルギーの補給
汗の量が多く、水分の損失を補う必要がある暑い時期には、身体の水分量の維持が大きな目的になります。
一方、水分の損失がそんなにない状況では、エネルギーの補給も大切になってきます。
2つは両立させられないのでしょうか?
実際には、どちらかを優先すると、もう一方は妥協せざるを得ないようです。
今回は、身体の水分量維持について、以下の内容で解説します。
- 身体に蓄積した熱を下げる方法
- 熱の放出とパフォーマンス
- 飲料水の摂取
- 身体の水分量を維持するための最適な飲料水の条件
- 飲み方の注意
身体に蓄積した熱を下げる方法
暑い時、運動中の水分摂取が大切なことは広く知られています。
実際、水分を摂取しないと、自由に摂取した場合よりも体温の上昇が早く、疲労も早く生じ、運動パフォーマンスが低下することが知られています。
暑い時期、そして運動中ともなれば体温の上昇が著しいです。
私たちは、体温が上昇し過ぎると身体の調節ができなくなりますので、熱を放出しなければなりません。
その一つが皮膚への血流量を増やす方法です。
熱を溜めた血液を皮膚に送り、そこから空気中に熱を移動させ空気の対流によって熱を外に逃します。
そして、もう一つが発汗です。
汗を皮膚表面に分泌し、蒸発させることによって、その際の気化熱で体温を下げます。
熱の放出と運動パフォーマンス
暑い時は、体温をさげるために皮膚血流量を増やさなければなりません。
限られた血液量を皮膚に取られると、筋肉に送ることができる血液量が減少することになります。
筋肉では、運動中、たくさんの酸素が必要ですから、それを運ぶ血液量はなんとか確保しなければなりません。
ですので、心臓の動きを早くして、不足分の血液量を補うのです。
また、発汗量が多くなると身体の水分量が減少してしまいます。
そうなると、血液量も少なくなってしまうのです。
皮膚血流量が増加すること、そして全身の血液量も減少することから、筋肉に十分な血液が配給されず、酸素不足になります。
このことが、運動パフォーマンスを低下させることになります。
これを防ぐためには水分を摂取して、血液量を減少させないようにすることが大切です。
また、冷たい飲料水であれば、身体の冷却を補助してくれる役割も期待できます。
飲料水の摂取
運動中の飲料水の摂取になりますので、いかに速やかに身体内に吸収させることができるかが重要です。
飲料水の多くは小腸で吸収されます。
ですので、できるだけ早く小腸まで飲料水を送り届ける必要があります。
胃にあるものが小腸に送り出される速さを胃内容排出速度といいます。
飲料水について、胃内容排出速度に関係する要因として以下の2つがあります。
- 飲料水の温度
- 飲料水の浸透圧
・飲料水の温度
同じ飲料水で温度のみを変えた研究があります。
これによると、飲料水の温度が低いほど、胃の中の残留量が少ないことが報告されています。
つまり、飲料水の温度が低いほど胃内容排出速度が速いのです。
・飲料水の浸透圧
浸透圧はちょっと説明するのが難しいのですが次の通りです。
濃度の違う飲み物が隣り合わせにあるとき、濃度を一定に保とうとして薄い方から濃い方の飲み物に水分が移動する力のことです。
きゅうりに塩をかけると水分が出て、しなしなになる現象と同じです。
私たちの血漿の浸透圧は283±5 mOsm/Lです。(単位は、mOsmはミリ オスモルと読みます。)
飲料水の浸透圧は、糖質や電解質などがどの程度含まれるかで決まります。
血漿と飲料水の浸透圧の関係で、飲料水は以下の3つのタイプに分類されます。
温度が一定で、浸透圧のみ異なる飲料水を飲ませた実験があります。
これによると、飲料水の浸透圧が低いほど、胃の中の残留量が少ない、すなわち、胃内容排出速度が速いことが報告されています。
身体の水分量を維持するための最適な飲料水の条件
身体の水分量を維持することを最優先に考える場合、糖や電解質の補給は2次的なものになります。
飲料水中の糖や電解質は胃内容排出速度を低下させてしまうからです。
これらを踏まえると、以下の通りです。
市販のスポーツドリンクには、アイソトニック飲料、ハイポトニック飲料があります。
大塚製薬のポカリスエットはアイソトニック飲料なので、運動中であれば、少し薄めて飲むようにしてください。
飲み方の注意
発汗量が多いからと言って、一度に多量の飲料水を摂取すると以下の問題点が生じることもありますので注意が必要です。
- 胃の膨満による不快感
- 胃の膨満による呼吸筋への悪影響
- 細胞内外の電解質のアンバランス→筋痙攣
まとめ
- 運動中に体温を下げるために発汗が行われ、身体の水分量が低下する。
- 身体の水分量の低下は、血液量の低下につながり、運動パフォーマンスを低下させる。
- 血液量を維持するために飲料水の摂取が必要である。
- 身体の水分量を維持するための最適な飲料水は、低温で浸透圧の低い飲料水である。
水分摂取といっても、何でも良いから飲めばいいというものではないんですね。
目的をしっかり考えて、適切な飲料水を飲むようにしましょう!
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