アスリートはかぜを引かないって本当ですか?
いえ、そんなことはありません。どちらかというと、アスリートは風邪を引きやすいとも言えます。
私たちの身体には、外部から体内に侵入した細菌やウィルスに対して、攻撃するシステムがあります。
それが免疫系です。
運動をすると、かぜを引きにくいと一般的に信じられています。
屈強なアスリートがかぜを引くことなんか想像できませんね。
しかし、必ずしもそうではないんです。
アスリートは、試合に勝つために激しいトレーニングに日々耐えています。
そして、緊張する試合で精神的にも追い詰められた状況が続きます。
このような状況は、身体的・精神的にも過度なストレス状態で、免疫系にも悪影響を及ぼすようです。
今回は、運動と免疫系の関係について以下の内容で解説します。
- アスリートと感染
- 運動と免疫系
- 適度な運動
- 免疫系のモニター
アスリートと感染
上気道感染症において、運動習慣なし、スポーツ愛好家及びアスリートで発生件数を調査した研究があります。
その結果、なんとアスリート、運動習慣なし、スポーツ愛好家の順に件数が多かったことが報告されました。
上気道とは、呼吸器の上部の鼻から咽頭(のどぼとけ)までを指します。
一方、下気道とは、呼吸器の下部である気管から肺胞までを指します。
上気道感染とは、上気道への感染で、ほとんどがウィルスによる感染で、いわゆる「かぜ」と言われているものです。
激しいトレーニングを積んでいるアスリートが上気道感染になりやすいとは意外ですよね。
実は、この「激しい」トレーニングが免疫系に影響を与えているようです。
運動と免疫系
運動を継続している人や継続することによる免疫系に及ぼす影響が検討されています。
それによると、運動不足の人よりも運動を実施している人の方が感染リスクは低いようです。
そこで問題なるのが量・強度になります。
運動の量・強度が適切だと感染リスクが低くなります。
しかし、それらが過度になると逆に感染リスクが増加するのです。
運動を実施すると、免疫系の指標が上昇します。
この反応は、私たちの身体にとっては良いことになります。
しかし、高強度の運動を実施した場合は、一時的に免疫系の指標が増加するのですが、その後低下してしまうようです。
これは、「オープンウィンドウ説」と呼ばれています。
激しい運動後に一時的な免疫が抑制される状態が生じるという説です。
窓が開いた状態だから、外部から不審者が侵入してしまうということですね。
適度な運動
免疫系を高めるためにはどんな運動をどのくらいやればよいのでしょうか?
それは以下の運動となります。
これは、いわゆる健康づくり運動として推奨されている有酸素運動です。
この運動は、生活習慣病の予防・改善し、メンタルヘルスにも良い影響があることが分かっています。
さらに、免疫系にも効果があったんですね!
最大酸素摂取量の50〜60%というのはどうしたらよいのでしょうか?
正確には、運動負荷試験を実施し、運動強度と運動中の酸素摂取量から、実際の運動条件(ウォーキングのスピードなど)を求めます。
ただ、この計測は簡単に実施できません。
ですので、カルボーネン法を活用することをおすすめします。
カルボーネン法については、以下のブログをご覧下さい。
免疫系のモニター
免疫系の状態をチェックできると便利ですよね。
免疫系が低下しているときは運動を控えるなど、コントロールできます。
適度な運動を実施していも、継続していく中で疲労がたまり、頑張り過ぎて運動量が過度になってしまうこともあります。
唾液などある分泌型免疫グロブリンA(SIgA)が免疫系のチェックに役立つ可能性が指摘されています。
唾液のSIgAを上気道感染症の発症前から継続的に計測した研究があります。
それによると、唾液SIgAが徐々に低下していき、上気道感染症を発症時に最低値、その後、回復とともに値も元に戻る変化を示しました。
また、トレーニングとの関連でも検討されています。
試合に向け激しいトレーニングを実施している時期よりも、試合直前のトレーニング量を減らしている時期で唾液SIgAが増加していました。
このことから、唾液SIgAが体調や運動量の管理に活用できそうです。
唾液から計測できることも簡単でいいですよね。
まとめ
- 上気道感染症(かぜ)の発生件数は、適度な運動実施者で少なく、アスリートでは高い
- 適度な運動では、運動後に免疫系が高まる。
- 激しい運動後には、一時的な免疫が抑制される状態が生じる(オープンウィンドウ説)。
- 適度な運動とは、最大酸素摂取量の50〜60%の強度で、1回20〜60分の運動を週3回以上実施することである。
- 唾液SIgAで免疫系の状況を把握できる可能性がある。
唾液SIgAは、まだ実用化にまでは至っていないようです。
ただ、自分の体調を数値として客観的に把握できる日は近いかもですね!
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