有酸素運動の継続(有酸素トレーニング)で、有酸素能力が向上します。
当たり前のようですが、これがトレーニングにおける「特異性の原理」といいます。
ですから、運動を始める前に、その目的を決め、その目的に合ったトレーニングをしないと効果がでないのです。
意外と、この点を意識せずに、闇雲に運動をされる方もいます。
注意したいですね。
では、有酸素トレーニングをすると身体の何が変化するのでしょうか?
有酸素運動は、運動中に必要なエネルギーであるATPを酸素を用いて作り出しています。
ですので、有酸素運動のパフォーマンスは、以下の2点で決まると言えます。
- 酸素を筋肉へ運搬する能力
- 筋肉で酸素を使う能力
有酸素トレーニングするとこれらの能力が向上していきます。
今回は、この点について解説します。
酸素を筋肉へ運搬する能力
・肺胞レベル
酸素は、肺にある肺胞というところで空気から取り込まれます。
肺胞には髪の毛の太さと同程度の毛細血管がはりめぐらされていて、そこで酸素が血液中のヘモグロビンとくっつくのです。
ですから、肺胞では毛細血管がたくさんあった方が肺胞から酸素を受け取るチャンスが増えます。
また、酸素はそのほとんどがヘモグロビンと結合して運搬されます。
なので、ヘモグロビンが多い方がより多くの酸素を運搬できます。
有酸素トレーニングをすると、肺胞の毛細血管やヘモグロビンが増えていきます。
・心臓レベル
肺胞で酸素をたくさん受け取った血液は、心臓に戻り、心臓がギュッと収縮して、その後全身に血液が運搬されます。
心臓がギュッと1回収縮して心臓から送り出される血液量を「1回拍出量」といいます。
1回拍出量と心拍数の積を「心拍出量」と言います。
これは、1分間に心臓から送り出される血液量となります。
有酸素トレーニングを実施すると、1回拍出量が増加していきます。
これはどんなメリットがあるのでしょうか?
心拍数には、上限があります。
これを最高心拍数と言いますが、(220ー年齢)で推定できます。
例えば、50歳の人で170拍/分となります。
このように心拍数には上限がありますから、1回拍出量が増加すれば、心拍出量を増やすことができるメリットがあるのです。
より多くの血液を筋肉に送ることができれば、それだけ高強度の運動が実施できるようになります。
1回拍出量の増加は運動中の心拍数にも変化をもたらします。
ある運動で必要となる血液量はおおよそ決まってきます。
例えば、分速○○mのスピードで走るためには、毎分●Lの血液量が必要だ、という具合です。
この血液量は、1回拍出量と心拍数で確保することになります。
トレーニングで1回拍出量が増えれば、同じ運動をしていても、その分、心拍数が低下することを意味します。
毎日、ほぼ同じスピードでウォーキングやジョギングをしていると、しばらくすると心拍数が低下してくれば、トレーニング効果が現れていたということです。
・筋肉レベル
筋肉には毛細血管で血液を導き入れます。
そして、肺胞とは逆に、血液から筋肉に酸素が受け渡されるのです。
筋肉の中で酸素を受け取るのがミオグロビンです。
ミオグロビンは、酸素をミトコンドリアに運搬したり、余った酸素を筋肉の中で保持する役目を果たします。
ですので、有酸素トレーニングの実施で、筋肉でも毛細血管が増え、ミオグロビン量も増えます。
筋肉で酸素を使う能力
筋肉の細胞中では、酸素はミトコンドリアに運搬されます。
ミトコンドリア内で酸素を用いてエネルギーとなるATPが合成されるのです。
酸素を使ってATPを合成できるのは、唯一、ミトコンドリア内だけなのです。
まさに、「有酸素=ミトコンドリア」です!
ですから、有酸素トレーニングをすると、ミトコンドリアの大きさが大きくなったり、数が増えるのです。
そうすれば、多くの酸素がATPをつくるために使用できるからです。
このミトコンドリアを多く含んでいるのが遅筋線維です。
遅筋線維内にはミオグロビンも多く含んでいます。
ミオグロビンは酸素と結合すると赤くなるので、遅筋線維は赤色をしています。
魚では、マグロの赤身がそれです。
遅筋線維は、酸素を使ってATPを多く合成できるので、長時間の運動をしても疲れにくいのです。
有酸素運動をすると遅筋線維の機能も向上するのです。
一方、速筋線維はミオグロビンやミトコンドリアが少ないです。
ですから、酸素が多く送られてきたとしても、利用できないのです。
このように、有酸素トレーニングすることで、私たちの身体は、酸素を運搬する能力、使う能力が向上し、長時間運動しても疲れない身体に進化していくのです。
長時間運動しても疲れない身体は、多くのエネルギーを消費でき、太りにくい身体となるのです!
まとめ
- 有酸素トレーニングを実施することで、酸素を筋肉に運搬する能力、筋肉で酸素を使う能力が向上する。
- 有酸素能力の向上は、毛細血管(肺胞、筋肉)、ヘモグロビン(血液中)、ミオグロン・ミトコンドリア(筋肉)が増加し、さらに遅筋線維の機能が向上することで生じる。
- さらに、心臓の機能が向上し、運動中の心拍数が減少する。
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