「無酸素性作業閾値」って、無酸素運動のなにかを測るものですか?
そうじゃあないんですよ。有酸素性の能力を測る指標になっています。
スポーツ科学の分野で有名な指標があります。
有酸素的な能力を表す指標としては、次の2つです。
- 最大酸素摂取量
- 無酸素性作業閾値
最大酸素摂取量は、これ以上運動できないという限界の運動中の酸素の取り込み量を計測します。
それに対して、無酸素性作業閾値は、最大まで追い込まなくても測定できることから、スポーツ科学界ではかなり注目されました。
しかし、「無酸素性」という言葉がうけるイメージと本来の意味が違っています。
また、無酸素性作業閾値、乳酸性作業閾値、換気性作業閾値など、同じものを表しているのに名称がいくつもあります。
このため、なかなか理解しづらいものにもなっています。
今回は、無酸素性作業閾値について、以下の内容で解説します。
- 無酸素性作業閾値って何?
- どうやって測るの?
- どくらいの値になるの?
無酸素性作業閾値って何?
「無酸素性」ってあるから無酸素運動に関係している何かだと思ってしまいます。
実は、そうではありません。
有酸素性の能力を示す指標になります。
軽い運動から始めて、きつい運動まで徐々に運動強度を上げていくことを考えてください。
この際のエネルギー供給について考えます。
以下を参考にしてください。
軽い運動では、運動で筋肉が使用するエネルギー(ATP)のほぼ全てを有酸素系で供給できます。
運動が徐々にきつくなってくると、筋肉で必要とされるATPが増えていきます。
やがて、有酸素系だけでは、十分なATPが供給できなくなってきます。
有酸素系は、その名の通り、酸素を用いてATPを再合成します。
そのためには十分な酸素が必要なのと、筋肉まで運ぶのに少し時間がかかるのです。
有酸素系でのATPが不足してくると、それを補うために無酸素系のエネルギー供給系が活発になってくるのです。
無酸素系のエネルギー供給は次の2つあります。
- ATP-PCr系
- 乳酸系
そして、無酸素系が活発になると、乳酸が増えてくるです。
無酸素性作業閾値は、無酸素系のエネルギー供給が活発になり始めたポイントを示す指標です。
すなわち、どの運動強度まで有酸素系で頑張れるのかを意味します
どうやって測るの?
無酸素性作業閾値を知るためには、次の2つの内どちらかを計測する必要があります。
- 乳酸
- 換気量
・乳酸
乳酸は、筋肉中にできるのですが、その一部が血液中に漏れ出てきます。
運動強度の変化にともなう血中乳酸濃度を計測します。
すると、ある運動強度から血中乳酸濃度が増加し始めます。
このポイントが無酸素性作業閾値となります。
血中乳酸濃度で計測するため、「乳酸性作業閾値」とも呼ばれます。
血中乳酸濃度は、指先や耳朶からわずかな血液を採取することで計測できます。
専用の機器は必要ですが、比較的安価な機器も販売されています。
・換気量
血液中では、乳酸から水素イオンが出されます。
この水素イオンが血液を酸性にするのですが、弱アルカリ性の私たちの身体には好ましいものではありません。
また、水素イオンは呼吸を増やす刺激となります。
1分間に肺で出し入れする空気の量を換気量といいます。
水素イオンが増えると、以下の流れで換気量が増加するのです。
無酸素系の活発化→血中乳酸濃度の増加→水素イオン濃度の増加→換気量の増加
このため、換気量が増加し始めるポイントが無酸素性作業閾値となります。
換気量から計測するため、「換気性作業閾値」と呼ばれます。
換気量を計測するためには、効果な機器が必要で、専門の研究所、大学、病院などでないと難しいです。
どくらいの値になるの?
最大酸素摂取量を基準にして無酸素性作業閾値を表すと次のようになります。
なお、無酸素性作業閾値は、乳酸、換気量、どちらで計測しても同じポイントになります。
・持久的アスリート
持久的アスリートでは、この値が高いほどマラソンのタイムが速いなど、パフォーマンスと直結する数値になります。
運動中に、極力、無酸素系を使用しない方がメリットが高いのです。
無酸素系を使うということは、疲労が蓄積し始めるとも言えるのです。
ですので、持久的アスリートは、無酸素性作業閾値を上げるトレーニングをしている訳です。
そして、実際に、トレーニングによって無酸素性作業閾値の現れる運動強度は増加していきます。
・一般人
健康づくりのための運動強度の目安になります。
最大酸素摂取量の50〜60%の強度は、有酸素系がメインの運動ですから、脂肪の燃焼には非常に効果的です。
乳酸も蓄積しないことから、身体への負担も少なく、安全性の高い運動強度と言えます。
一般人であっても、持久的なトレーニングを継続していると、無酸素性作業閾値が現れる運動強度は増加します。
高い運動強度に無酸素性作業閾値が移動すれば、酸素を用いた脂肪燃焼量がより多くなります。
より脂肪を使いやすい身体になると言えます。
まとめ
- 運動強度が増加する際、有酸素系が主体のエネルギー供給から無酸素系が関わり始めるポイントを無酸素性作業閾値と言う。
- 乳酸や換気量を計測することで計測することができる。
- 持久的アスリートでは、無酸素性作業閾値が高いこととパフォーマンスの関係性が高い。
- 一般人では、無酸素性作業閾値の強度で運動することが、脂肪の燃焼を高め、安全性の高い運動が可能となる。
脂肪は、体内に蓄積することに特化したもので、減らすのはなかなか大変です。
効率よく、たくさんの脂肪を減らしたいものですね。
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