糖質を貯蔵する

健康・運動

カーボローディングって何ですか?

体内の糖質貯蔵量を増やす方法です。

マラソン大会などの前夜祭で、「カーボローディング」と称してスパゲッティなどを食べるイベントがありますね。

なんでスパゲッティなんでしょうか?

「カーボ」は炭水化物で、「ローディング」は貯蔵という意味です。

それは、マラソン前に炭水化物を食べて、体内にそれを貯蔵しようという意図があります。

体内に炭水化物を貯蔵することが、パフォーマンスの向上につながるからです。

今回は、カーボローディングについて以下の内容で解説します。

  1. 糖質とエネルギー供給系
  2. 糖質の貯蔵
  3. 糖質と長距離系パフォーマンス
  4. 糖質を貯める方法

・糖質とエネルギー供給系

炭水化物と糖質

炭水化物と糖質という言葉があります。

炭水化物は、糖質と食物繊維を合わせたものを指す言葉です。

食物繊維は糖質の仲間ですが、私たち人間の消化酵素では消化されないためエネルギー源にならないのです。

なので、私たちは、炭水化物の内、糖質をエネルギーとして利用しているのです。

世の中では、炭水化物は糖質とほぼ同義で利用されているようです。

しかし、実際には上記のような違いがありますので注意しましょう。

エネルギー供給系と糖質

私たちはATP(アデノシン三リン酸)とう物質を用いて筋肉を動かしています。

このATPを再合成する経路には以下の3つがあります。

  • ATP-PCr系
  • 乳酸系
  • 有酸素系

詳細は以下のブログを参照してください。

これらの経路の内、乳酸系と有酸素系は糖質を用いて、これを分解しながらATPを再合成していきます。

ただ、糖質は体内に貯蔵できる量が限られています。

・糖質の貯蔵

 糖質は以下に貯蔵されています。

糖質が貯蔵されている場所
  • 肝臓
  • 骨格筋
  • 血液

骨格筋は、四肢・体幹にある筋肉で私たちの動作を生み出しているものです。

血液に貯蔵されている糖は、血糖と言われ、

空腹時血糖値は60〜99mg/dL程度となっています。

これ以上だと高血糖となり、糖尿病の危険性も出てきます。

糖質の貯蔵量を60kgの成人の場合(血液量5リットル)で考えてみましょう。

食事や運動によって増減しますので概算となります。

  • 筋肉 → 約300g
  • 肝臓 → 約100g
  • 血液 → 約5g

合計すると、405gぐらいということですね。

脂肪を考えてみると、体脂肪率が20%だとすると12kgになります。

体脂肪率が20%と、一般的な女性の標準的な数値で、決して肥満ではありません。

それでも12kgの脂肪が貯蔵できているのに対して、糖質の貯蔵量がいかに少ないかがわかります。

また、糖質の貯蔵には限界があって、過剰に摂取された糖質は脂肪として貯蔵さます。

・糖質と長距離系パフォーマンス

長時間運動では、糖質と脂質が運動に必要なATPを再合成するために利用されています。

運動強度と運動時間が増加すると糖質の利用が増加します。

糖質の貯蔵量は脂肪ほど多くありません。

そのため、長時間運動になると、やがて筋肉の糖質の量は減少し,疲労困憊の状況ではほぼ枯渇してしまいます。

脂肪が多量に貯蔵されているんだから、糖質が枯渇しても問題ないと考えてしまいますよね。

実はそうではないのです。

エネルギー源として脂質を使用する場合においても糖質が必須なんです。

また、筋肉だけでなく、肝臓に貯蔵されている糖質が枯渇すると、血糖値が低下します。

こうなると、低血糖となり、筋力低下、めまい、吐き気、意識障害などの症状や中枢性疲労を引き起こします。

このように糖質の貯蔵量は競技パフォーマンスに直結するのです。

ですから、糖質は枯渇しないようにしないといけません。

マラソンは途中で水分摂取をしますが、その中には糖質も含まれ、体内でなくなった糖質を補充する役目もあるのです。

・糖質を貯める方法

先程も少し触れましたが、糖質の貯蔵には限界があるようで、たくさんの量を貯蔵できません。

しかし、筋肉に糖質の貯蔵量を増やす試みがなされ、カーボローディングという方法が考え出されました。

これは、筋肉にある糖質を一度、枯渇させ、その後、高糖質の食事を摂取することで、枯渇する前よりも多くの糖質が貯蔵されることが発見されたことによります。

カーボローディングの方法

方法としては、以下の2つの期に分けられます。

 ・糖質の枯渇期

   高強度トレーニングと高脂肪・低糖質の食事を摂取し糖質を枯渇させる。

 ・糖質の補充期

   運動強度を落とし、低脂肪・高糖質の食事を摂取させる。

方法のポイントは、以下の2点です。

  • トレーニング量と食事を調整しながら、筋肉の糖質をいかに枯渇させるか。
  • どのタイミングでトレーニング量と食事を変えるのか。

これは個人差もあり、経験によるところも多いようです。

トレーニング中に、筋肉のグリコーゲン量を知ることは現実的には難しいことも、タイミングが難しい理由です。

カーボローディングの問題点

糖質の貯蔵量を増やすことで生じる問題点もあります。

それは、糖質1gは2.7gの水とともに蓄積されることです。

もし、糖質が300g増加すれば,水810gがともに蓄積されることになり、体重が1,110g(300+810)増えます。

筋肉に貯蔵されることから、これが不快感やパフォーマンスにネガティブな影響を与える可能性もあります。

このあたりも個人差が大きいようです。

ですので、日頃のトレーニング中で、いろいろな方法を試しながら、ベストな方法を見つけていくことが大切となります。

残念ながら、すべての人に通じる方法はありません。

まとめ

  • 糖質は、血液、肝臓、骨格筋に貯蔵されるが、その量は脂肪ほど多くない。
  • 長時間運動中の糖質の枯渇は、脂質の利用が制限され、また低血糖により競技パフォーマンを低下させる。
  • 糖質の貯蔵量には限界があるが、糖質を枯渇させた後に高糖質の食事を摂取することで、貯蔵量を増やすことができる。
  • 糖質の貯蔵は、水分の貯蔵を伴うため、体重を増加させたり、筋肉に違和感を感じ、競技パフォーマンスにネガティブに作用する可能性もある。

科学的に効果があると確認されていても、自分にそれが合うとは限りません。

大事な試合の前に、何度か実施してみて、自分なりのやり方を見つけて下さい。

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