運動強度はどうやって調べるのですか?
酸素摂取量を計測することです。
でも、実際には酸素摂取量を計測することはなかなか難しいです。
トレーニングで効果を得るために最も大切なのが運動強度になります。
適切な運動強度で実施しなければ、運動による効果は得られません。
そればかりか、過度な運動強度の場合には、命にかかわるような危険な状況に陥ってしまうこともあります。
中高齢者では特に注意したいですね。
では、運動強度とはどうやって知ることができるのでしょうか?
ウォーキングやジョギングのような有酸素運動であれば、有酸素能力の最大値を基準にします。
有酸素能力の最大値のことを、「最大酸素摂取量」と言います。
この最大酸素摂取量に対して、実施している運動中の酸素摂取量が何%なのかで強度を表せます。
しかし、酸素摂取量を計測するのはなかなか大変で、私たちが日常で使用することはできません。
今回、運動強度と酸素摂取量について以下の内容で解説します。
- 有酸素運動の運動強度の規準
- 運動強度の求め方
- 酸素摂取量の計測法
有酸素運動の運動強度の規準
有酸素運動の場合、有酸素能力の最大値を運動強度の規準と用います。
これは「最大酸素摂取量」と呼ばれています。
VO2maxと略されることも多いです。
Vは量、O2は酸素、maxは最大、を表しています。
本来は、Vの上に「・」が付いています。
これは、1分間あたりを表しています。
1分間あたり、体重あたり、何ミリリットルの酸素を身体内に取り込めるかの最大値となります。
単位は、[mL・kg-1・分-1]となります。
身体の大きい人は酸素をたくさん取り込みます。
ですから、体重で標準化して、いろんな人と比較できる数値にしています。
この値は、18〜39歳の男性の場合、「健康づくりのための身体活動基準2013」の基準値では39 [mL・kg-1・分-1 ]です。
一方、マラソン選手のような一流の長距離アスリートでは、70〜90 [mL・kg-1・分-1]と一般人の2倍もあります。
運動強度の求め方
例えば、Aさんの最大酸素摂取量が40 [mL・kg-1・分-1]だとします。
Aさんがジョギングをして、その時の酸素摂取量が20 [mL・kg-1・分-1]でした。
この場合、以下のように運動強度が算出されます。
%最大酸素摂取量(%VO2max)=20/40✕100=50 [%]
最大酸素摂取量に対する割合が、運動強度となるのです。
ですから、自分の運動強度を知るためには、最大酸素摂取量と運動中の酸素摂取量がわかれば良いことになります。
これが、最も精確な運動強度を知る方法です。
しかし、ここに問題があります。
酸素摂取量の計測法
酸素摂取量の求め方
私たちが身体に取り込んだ酸素の量をどうやって計測するのでしょうか?
簡単には、次のように求めることができます。
摂取した酸素の量=(取り込んだ空気中の酸素の量)ー(吐き出された空気中の酸素の量)
空気中に含まれる酸素の濃度は20.93%です。
これと、取り込んだ空気の量の積から、(取り込んだ空気中の酸素の量)を知ることができます。
一方、(吐き出された空気中の酸素の量)は、筋肉で使われずに排出された酸素量です。
吐き出された空気の量と、その空気に含まれる酸素の濃度の積で知ることができます。
計測機器
取り入れる・吐き出される空気の量、吐き出された空気中の酸素濃度は計測しなければなりません。
これには、高価な専用の機器が必要です。
私が使用したことがあるのがミナト医科学社の装置です。(写真1)
マスク
身体を出入りする空気の量・酸素の濃度を計測しますので、鼻と口を覆うマスクを着用します。
マスクは、ゴムバンドなどで顔に固定します。
マスクと顔の間に隙間があると精確に計測できませんので、注意が必要です。
マスクを装着した写真がもう少し下の方にあります。(写真2)
この出入りされた空気を専用の機器で分析することになります。
測定の制限
この測定法の問題点は、機器の近くでしか測定できないことです。
専用の機器を移動させながら測定はできなからです。
ですから、屋外での運動、例えばランニングをしている際には計測できません。
そのため、トレッドミルや自転車エルゴメータといった運動負荷装置というものを使用して、実際のランニングや自転車運動を模した運動をさせて、計測することになります。
屋外での計測
では、実際に屋外運動している時の酸素摂取量は測定できるのでしょうか?
実は、これがなかなか難しい問題です。
一つは、屋外で運動中の吐き出した息を回収して、上記の機器で分析する方法です。
吐き出した空気の回収にはダグラスバックという大きな袋を使います。
このように、ダグラスバックで空気を集めるのも大変です。
2つ目は、携帯用の専用機器を使用することです。
いくつか機器があるようですが、以下の写真はイタリアCOSMED社製※の機器です。(写真3)
※東洋メディックス㈱が代理店
これであれば、屋外での運動中の酸素摂取量を連続計測できます。
しかし、この機器がとても高価です・・・
このように、運動中の酸素摂取量を計測するのはかなり大変だということがわかります。
ですので、私たちがトレーニングの運動強度を酸素摂取量で精確に計測するのは、現状ではできません。
このような状況から、酸素摂取量に変わる運動強度の指標が提案され、実用化されています。
これについては、別のところで解説します。
まとめ
- 運動による効果を得るためには運動強度の設定が重要である。
- 有酸素運動の運動強度は最大酸素摂取量を規準とする。
- 最大酸素摂取量や運動中の酸素摂取量を計測することは難しい。
- 日常で活用するためには、酸素摂取量に変わる運動強度の指標が必要である。
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