ハイキングに行こうと思っていますが、注意することってありますか?
最初は軽めのコースと服装やシューズの準備をしっかりお願いします!
ハイキングや登山は中高齢者に大変人気があります。
普段とは違った自然の中で運動できるのが魅力ですよね。
ハイキングや登山は、ウォーキングの一種に分類されているそうです。
また、少し驚きなんですが、ハイキングと登山には明瞭な区別はないそうです。
個人的には、次のようなイメージでいました。
ハイキング:健康づくりとして行う、標高の低い山を登るもの
登山:標高のある本格的な山を登るもの
一応、以下のような歩行時間の差でこれらを区別することが多いようです。
ハイキング:歩行時間が3〜4時間程度のもの
登山:それ以上のもの
今回は、ハイキングについて次の2点を解説します。
- 身体への効果
- 注意点
身体への効果
運動強度
ハイキングの運動強度は6メッツぐらいのようです。
ただ、標高、勾配によってメッツ値は変わりますので注意してください。
やや速歩(平地、毎分93m)で4.3メッツ、ジョギングで7メッツとなります。
ハイキングは、ジョギングに近い運動と言えます。
40〜59歳の全身持久力の最大値の基準は、男性で10メッツで女性で8.5メッツとなります※
(※健康づくりのための身体活動基準 2013 )
ですから、全身持久力の最大値に対して、ハイキングは男性で60%、女性で70%の運動強度となります。
この運動強度は、男性にとっては脂肪の燃焼効率のよい運動と言えます。
一方、女性では、脂肪を燃焼させるには少し運動強度が高く、きつい運動になります。
ですので、女性の場合は、標高、勾配、歩行時間などを考慮する必要があります。
もちろん、個人の体力によって運動強度が変わるので注意して下さい。
体力のない人にはもっときつい運動、体力のある人には適度な運動にもなります。
筋力のアップ
ハイキングでは、上り下りで下肢の筋肉に大きな負担がかかります。
上りでは、自分の体重を持ち上げ、下りでは着地時の大きな衝撃を下肢の筋肉で受け止めなければなりません。
つまり、ハイキングでは、有酸素運動だけでなく、筋トレも同時に行っていることになるのです。
30歳以降、加齢にともなって筋肉が萎縮し、筋力が低下する加齢性筋減弱症(サルコペニア)が問題となります。
このため、中高齢者では、有酸素運動だけでなく筋トレも大切になるのです。
筋肉・筋力を維持することが、活動的な生活を維持し、転倒などのアクシデントの予防につながります。
しかし、残念ながら、平地のウォーキングのような有酸素運動だけでは筋力は維持できません。
ですから、ハイキングは健康づくりとして良い運動だと言えます。
リラックス
ハイキングでは、草木が生い茂り、空気の澄んだ自然環境の中で行われます。
森林浴、特に緑の香りが疲労や疲労感を軽減させることが報告されています。
日々の仕事などで乱れた自律神経を整え、リラックス感を与えてくれる効果があります。
注意点
気温・湿度など
高度が100m上がる毎に気温が0.65℃低下します。
平地では暖かくても、高度の高い所では気温が低くなります。
日が落ちると気温が急激に下がります。
風速が毎秒1mあると体感温度が1℃下がると言われています。
これらの点も注意して、服装の準備をしましょう。
また、高度が高いところでは空気が乾燥しています。
呼吸などによって身体の水分損失が多くなりますので、しっかり水分摂取をしましょう。
さらに、紫外線も強くなりますので、サングラスなども準備すると良いでしょう。
高度があまり高くないところであればこれらの影響は少なくなります。
道
ハイキングコースは不整地になります。
凸凹道で、石も散在しています。
整備された道を歩き慣れている私たちには、なかなか手ごわいです。
ハイキングや登山用の専用のシューズを購入することをオススメします。
専用のシューズは、底が厚く、鋭利なものがあっても簡単には突き抜けないようになっています。
また、歩くときは歩幅を注意しましょう。
凸凹道で転倒などのリスクがありますから、歩幅は普段よりも狭めるのが良いでしょう。
筋肉痛
上りでは、自分の体重を上に移動させるので、平地歩行よりも下肢の筋に負担をかけることになります。
しかし、下りの方が筋肉への負担は大きくなります。
下りは、上りと違い、呼吸や心臓への負担が少ないので楽に感じるのですが、筋の負担は逆に大きいのです。
下りでは、足を着地させる際に大きな衝撃を下肢の筋肉で受け止めなければなりません。
この際、下肢の筋肉では、筋肉が伸ばされながら力を発揮します(伸張性収縮と言います)。
このタイプの力の発揮においては、筋肉痛が生じやすいと言われています。
ですから、ハイキングに行く前に、階段の上り下りなどをして、少し慣らしておくのが良いと思います。
十分な準備
コースとその難易度を事前に確認しましょう。
行ってみたらとても難しいコースで体力以上だった・・・
このような状況は初心者に多いようで、遭難などのトラブルになります。
何かあっても誰かがすぐに助けてくれる、救急車を呼べる、そんな環境でないことを頭に入れておきましょう。
とにかく、事前の下調べが大切です。
無理をしない
何事にも通ずることですが、最初から無理をしないことが大切です。
初心者の方は、次のように進めていって下さい。
・最初は、標高は低く、勾配のあまりない所を、短時間から始める
・その場所で、徐々に時間を伸ばしていく
・十分慣れ、体力がついてから、難易度(標高や勾配)を徐々に上げていく
まとめ
- ハイキングと登山の明確な区別はない。
- ハイキングは、ジョギングに近い運動強度で、女性にはきつい運動になることが多い。
- ハイキングは、有酸素運動とともに筋トレの効果、さらには森林浴によるリラックス効果が期待できる。
- 高度が高い所では、気温の変化に注意し、水分摂取を十分に行う必要がある。
- 山道は不整地なので、専用のシューズを用意し、歩幅は普段よりも狭める。
- 初心者は無理をせず、難易度(標高や勾配)の低い山を選択する。
- 事前の準備を怠らないことが、遭難などのリスクを減らす。
無理をして何かあっては困る環境です。
気軽に考えず、準備しましょう!
あと、ゴミは必ず持ち帰りましょう!
<参考文献>
- 「第6章 メタボリックシンドロームに対して有効な運動・スポーツの実際 3.ハイキング・登山」、山本 正嘉 (「メタボリックシンドロームに効果的な運動・スポーツ」、2011、ナップ)
- 「健康運動指導士 養成講習会テキスト」
- 「最新•疲労の科学-日本発:抗疲労•抗過労への提言-」、医歯薬出版株式会社
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