血圧が心配なんだけど、運動すると血圧はどうなるんですか?
上がりますが、運動の種類でその程度は異なります。
血圧が高い人や高血圧の人が運動を始めるには注意が必要です。
それは、運動によって血圧が上昇するからです。
また、どんな運動をするかによって血圧の上昇の程度が異なります。
血圧に不安のある人は頭に入れておきたい知識ですね。
今回は、運動の種類と血圧について、以下の内容で解説します。
- 血圧とは
- 運動の種類による血圧の変化
- 運動強度と血圧
- ウォーミングアップと血圧
1.血圧とは
血圧は血管を押し広げる圧力を計測したものです。
心臓が収縮して血液を押し出している時に最も高くなります。
これを「最高血圧」、あるいは「収縮期血圧」と言います。
一方、心臓が拡張している時に最も低くなります。
これを「最低血圧」、あるいは「拡張期血圧」と言います。
血圧は、最高血圧と最低血圧の間を常に変動しています。
安静時の正常血圧は、最高血圧が120mmHg未満かつ、最低血圧が80mmHg未満になります。
血圧は以下のように決定されます。
心拍出量は、1分間あたりに心臓から送り出される血液の量です。
末梢血管抵抗は、血管(主に、細動脈)での血液の流れやすさを表しています。
抵抗が大きいというのは、血液が流れにくい状況です。
人で混雑した道の中を進むのは大変ですよね。
その状況です。
2.運動の種類による血圧の変化
運動をすると、筋肉で多くの酸素が必要なことから、心臓からたくさんの血液を運ばなければならなくなります。
ですので、血圧は上昇します。
しかし、血圧の上昇の仕方が以下の運動の種類によって異なるのです。
- 動的運動
- 静的運動
・動的運動
動的運動とは、筋肉が収縮と弛緩をリズミカルに繰り返す運動です。
例えば、ウォーキング、ジョギング、自転車などの運動が動的運動に分類されます。
動的運動では、以下の理由で心拍出量が増加します。
- ① 筋ポンプ作用
- ② 血管抵抗の低下
①筋ポンプ作用
筋肉が収縮すると中にある血管は押しつぶされます。
一方、弛緩中は血管が開きます。
このように収縮と弛緩を繰り返すことで、ポンプのように血液の流れをよくする作用です。
そのため、心臓に血液がたくさん戻り、結果的に心拍出量が増加します。
②血管抵抗の低下
動的運動では、末梢血管が拡張して血管の抵抗が低下します。
動的運動では、局所性の血管拡張作用が作用するためです。
心拍出量が増加し、末梢血管抵抗が減少することから、
・静的運動
静的運動は、筋肉が収縮した状態がしばらく続く運動です。
例えば、筋トレです。
錘(おもり)を持って、しばらく筋肉が収縮する状況が続きます。
静的運動では、筋肉が収縮している時間が長く、その間、血管が押しつぶされた状態が続きます。
その結果、末梢血管抵抗を増加させることから、
3.運動強度と血圧
運動強度が高まると、筋肉でより多くの酸素が必要となります。
そのため、心拍出量が増加し、血圧も増加することになります。
動的運動の場合、最高血圧の上昇は運動強度に比例して上昇し、一方、最低血圧はほぼ変化しないか、若干低下することもあります。
それに対して、静的運動の場合は、運動強度に比例して、最高血圧も最低血圧も両方とも増加します。
重量挙げ(静的運動)では、血圧が300mmHgを超えることもあるようです。
このように運動によって血圧は増加しますが、運動の種類による違いは以下の通りです。
4.ウォーミングアップと血圧
激しい運動などをすると、血圧が急上昇します。
しかし、ウォーミングアップをすると、血圧の上昇を抑える効果があります。
ただ、ウォーミングアップは軽めで行う必要があります。
また、ウォーミングアップなしで高強度の運動を行うと、運動直後に急激に減少後、ふたたび上昇する不規則な変化が生じます。
ウォーミングアップをすることで、運動後の急激な変化はなくなり、スムーズに安静時に回復します。
運動前のウォーミングアップは、血圧という観点からも大切ですね!
まとめ
- 血圧は、血管を押し広げる圧力のことで、心拍出量と末梢血管抵抗の要因で決定します。
- 運動により、血圧は上昇する。
- 動的運動の場合は、心拍出量が増加し、末梢血管抵抗が減少することから、最高血圧が上昇し、最低血圧が減少する。
- 静的運動の場合は、末梢血管抵抗が増加することで、最高血圧も、最低血圧も増加する。
- 動的運動よりも、静的運動の方が血圧を上昇させる。
- ウォーミングアップによって、運動中、回復中の急激な血圧変動を抑えることができる。
運動は血圧を上げます。
血圧に不安のある人が運動を実施する場合は、事前に必ずお医者さんと相談するようにしましょう。
参考文献
- 「スポーツ医学1-病気と運動- 」、池上晴夫著、朝倉書店
- 「健康運動指導士 養成講習会テキスト」(上)
コメント