せっかく運動を始めても、なかなか続かない・・・
そんな悩みを抱えている人は少なくありません。
アメリカの調査では、運動教室に参加する人の約50%が6ヶ月以内にドロップアウトするそうです1)。
どこでも事情は同じなんですね。
せっかく運動を始めても、継続しないとその効果は得られません。
簡単に続けられるようになる方法がないものでしょうか?
しかし、残念ながら、最新の研究成果を持ってしても、運動を継続させる良い方法はなさそうです。
ただ、運動を継続させるアプローチは提案されています。
人の心理的な特性を活用する方法で、行動変容という考え方です。
禁煙のための教育プログラムがベースとなった考え方です。
タバコをやめようと全く思っていない人と、タバコをやめようと思い始めている人に、同じような働きかけしてもダメですよね。
その人の状況に合った、働きかけや工夫がありそうです。
今回は、この行動変容について解説していきます。
行動変容とは
人が行動を変えることを行動変容といいます。
行動は次の5つのステージを通り変容していく、というのがこの理論の考え方です。
行動が段階的に連続的に進んでいけば、運動習慣を定着させることができます。
しかし、事態はそう簡単ではありません。
ステージ間は、進んだかと思えば後戻りしたり、あるいは、全く進んでいかないこともあるわけです。
対象者が、今、どのステージにいるかを把握して、そのステージに合わせた働きかけや工夫をして、運動の実行・維持に導いていく手法になります。
各ステージへの働きかけ
運動をしていない人に、一律に同じ働きかけをしても効果が望めません。
全く運動をする気持ちの無い人に、運動するよう説得しても暖簾に腕押しです。
一方、運動しようと思っている人には、ちょっとしたきっかけで運動の実行に導くことができます。
このように、状況に合わせた、最適な働きかけをすることで行動変容を促すのです。
前熟考ステージ(無関心期)へのアプローチ
無関心なだけに、大変難しい時期です。
まずは、運動に関する情報を収集し、運動のメリットを調べてみましょう。
運動しないことで引き起こされる、マイナスのイメージや感情を体験することも良い方法です。
例えば、実際に生活習慣病になっている人の映像を見て、いかに生活の質が低下するのかを疑似体験する方法です。
荒療治ではありますが、無関心な時期にはこれぐらいのインパクトが必要かも知れませんね。
また、運動不足で生活習慣病になった時に周囲に与える影響を考えてみましょう。
入院や通院の世話、仕事への影響など、考えると多大な影響がありそうですよ。
熟考ステージ(関心期)へのアプローチ
運動をすることで、自分自身にどのようなメリットがあるかを考えてみましょう。
体重が減ると身体が軽く、動くことが楽しくなります。
例えば、高血圧で降圧剤の服薬があれば、その量が減ったり、病院にいく回数も少なくなります。
運動をすることで、気持ちが前向きになり、いろいろなことにチャレンジできるようになります。
運動にはいろんなメリットがあり、それを得た自分を想像してみて下さい。
運動したくなってきましたね!
準備ステージ(準備期)へのアプローチ
運動実践まで、もうあと一歩のところです。
自分に運動ができるのか、不安に思っている方もいるかも知れません。
自信をもって下さい、できます!
身近な方に運動をすることを意思表明するのもよい方法です。
そうすることで、自分の中で大きな決心ができます。
実行・維持ステージ(実行・維持期)
自分がやってしまいがちな不健康な行動を健康的な行動に変えてみましょう。
例えば、ストレス発散のためにお酒を飲みに行くのではなく、代わりに運動するといった具合です。
また、運動の継続が大変な時には、周りからのサポートを活用してみましょう。
一緒に運動する仲間を見つけると、お互いのサポートができますよ!
運動を続けていることに対して、自分自身にご褒美を与えるのもこのステージでは良い方法です。
新しいウエアやシューズを買うとか、ご褒美になるものがいいですね。
ただ、ケーキとかカロリーの高いも食べるのは要注意です。
さらに、常に目につくところにウエアやシューズを置いておくなど、運動に取り組みやすい環境を整えることも、運動継続を維持する上での工夫になります。
運動をやめれば元に戻る
まずは運動を始めることが、なによりも大切ですよね。
始めなければ何も変わりません。
また、運動を始めても途中でやめてしまえば、せっかく運動で得た効果もなくなってしまいます。
トレーニングには「可逆性の原理」というものがあります。
トレーニングすれば身体は鍛えられるが、やめれば元の状態に戻るというものです。
運動の効果は、すぐには現れません。
ですから、効果がないと思ってやめてしまう人が多いのです。
しかし、身体の中では着実に変化しています。
自分で実感するまでに、時間がかかっているだけです。
まずは始めることですが、始めても継続していけるよう、行動変容の考え方を活用していきましょう!
まとめ
- 運動を始め、継続していくためのヒントして、行動変容の考え方が活用できる。
- 人が行動を変容する場合、前熟考ステージ →熟考ステージ →準備ステージ →実行ステージ →維持ステージ へと進んでいく。
- 各ステージに合わせた働きかけや工夫が必要である。
<引用・参考文献>
1)健康運動指導士養成テキスト
2)https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/exercise/s-07-001.html
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