「サルコペニア」という言葉を知っていますか?
「サルコ」は筋肉、「ペニア」は喪失を意味するギリシャ語が組み合わせて作られた言葉です。
1989年にアメリカのRosenbergによって提唱されました。
ここで言う「筋肉」とは、身体を動かす筋肉である骨格筋のことです。
加齢に伴い骨格筋が減少する状態です。
50歳以降毎年1〜2%もの骨格筋量が減少すると言われています。
原因として、年齢以外の要因がないものと、活動量の低下、疾病や栄養不足など明らかな要因があるものが考えられているようです。
骨格筋が減少することでどんな問題が生じるでしょうか?
私たちが身体を動かす原動力は筋肉です。
その筋肉量が減少するということは、活動量が減少することに直結します。
筋肉が減少する→身体を動かすとすぐに疲れる→必要最小限しか動かない→筋肉が減少する
この負のスパイラルに陥ってしまいます。
活動量が低下すると脂肪が蓄積し生活習慣病が、また、筋肉量の低下は転倒のリスクが増えます。
転倒は、骨折、寝たきりに直結し、介護が必要な状態になってしまいます。
サルコペニアにならないためにも、早期に発見して、改善していく必要があります。
現在では、下腿周囲径の計測や質問紙(SARC-F)で簡易的ではありますが、家庭で簡単にできるサルコペニアのチェック法があります。
今回は、このチェック法について、以下の内容で解説します。
- 筋肉量の計測
- 下腿周囲径
- 質問紙(SARC-F)
筋肉量の計測
サルコペニアは、骨格筋量の低下が引き起こされます。
ですから、骨格筋量を計測することが大切になります。
では、どうやったら計測できるのでしょうか?
以下の方法で計測することが推奨されているようです。
- DXA法(二重エネルギーX線吸収測定法)
- BIA法(多周波インピーダンス法)
DXA法は骨密度測定で知っている方もいるのではないでしょうか?
X線を照射して、骨や筋肉などの組織を分類して、それらの量などを推定するものです。
ただ、X線は放射線なので、特別な施設でないと計測できません。
BIA法は、身体に弱い電気を流してインピーダンス(電気の流れにくさ)を計測して、筋肉量を推定するものです。
多周波インピーダンスが計測できる機器は高価で、家庭で手軽に手に入るものではありません。
家庭で、手軽に計測できれば、早期に危険を察知できますから、そのような方法が望まれます。
精度は落ちますが、家庭でもできる方法があります。
- 下腿周囲径
- 質問紙(SRC-F)
下腿周囲径
筋肉量を計測するのは、上で示したように特別な機器が必要です。
家庭でできるもっと手軽なチェック法があるといいですよね。
それが、下腿周囲径です。
計測法は簡単です。
計測する姿勢で値が変わりますので、計測時の姿勢はいつも同じにしましょう。
家庭で一人で計測する場合は座位、誰かに計測してもらう場合は立位の方が計測しやすいと思います。
左右で太さが異なると思いますので、両方を計測しておきましょう。
周囲径を計測するのは、少し慣れが必要です。
メジャーが斜めにならないように、脛骨と直角になるようにしましょう。
メジャーは布のものが計測しやすいと思います。
計測は毎日でなくても良いです。
半月あるいは1ヶ月に1度ぐらいの頻度で計測すれば良いと思います。
下腿周囲径が、男性で34cm未満、女性で33cm未満でサルコペニアが疑われます。
質問紙(SARC-F)
筋肉量の評価以外にもサルコペニアをスクリーニングするツールがあります。
それがSARC-Fという質問紙です。
SARC-Fは、サルコペニアのスクリーニングツールとしてMoreyにより提示されました。
5つの質問からなり、それぞれ以下の要素の頭文字をとった名称になっています。
S→Strength(力の弱さ)
A→Assistance walking(歩行補助具の有無)
R→Rising from a chair(椅子からの立ち上がり)
C→Climbing stairs(階段を登る)
F→Falls(転倒)
下表は、SARC-Fの日本語版になります。
得点が4点以上になると、サルコペニアが疑われます。
このように、簡単にチェックできますので、定期的に実施することをおすすめします。
ただ、これらはあくまでも簡易的なチェックですので、最終的には医療機関での精密な検査を受けることをおすすめします。
まとめ
- 中高齢者では、サルコペニアのリスクが高まる。
- 下腿周囲径の計測や質問紙(SARC-F)で簡易的にサルコペニアのスクリーニングが行える。
- 下腿の最も太い周囲径(下腿周囲径)が、男性で34cm未満、女性で33cm未満でサルコペニアが疑われる。
- 質問紙(SARC-F)は5つの質問に答え、4点以上でサルコペニアが疑われる。
- これらは簡易的な方法であり、医療機関での精密な検査を受けることが推奨される。
家庭でできる簡単なスクリーニングツールで、骨格筋量の状態を把握して、元気で活動的な毎日を送りたいですね!
<資料>
- 「下腿周囲長による筋量不足の簡易スクリーニング」、川上、体力科学、72、2023
- 「SARC-F; サルコペニアのスクリーニングツール」、解良ら、日老医誌、56、2019
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