血圧は、身近な健康のバロメータの一つです。
比較的安価に血圧計が購入できますので、中高齢者は毎日計測したいですね。
血圧の値には気を配っている人も多いと思いますが、実は血圧の変動にも注意する必要があります。
中高齢者にとって、血圧の変動は、血管への過度な負荷となり、損傷の原因にもなります。
冬の時期、この血圧の変動が大きくなる場所があります。
それがお風呂場です。
冬のお風呂場は、温度と姿勢が大きく変化するため、血圧の変動が大きくなるのです。
脱衣所や洗い場は寒く、湯船は温かくなります。
湯船では横になっている姿勢から、立ち上がる姿勢まで変化します。
そのため、お風呂場での中高齢者の死亡事故が増えています。
今回は、なぜ、お風呂場で血圧の変動が大きくなるのかを以下の内容で解説します。
- 血圧と年齢
- お風呂場での血圧の変動
- お風呂場での事故
血圧と年齢
血圧は、血液が流れる際の血管を押し広げる圧力のことです。
そして、血圧は、心拍出量、末梢血管抵抗などの影響を受けて変動します。
心拍出量は心臓からでる血液量、末梢血管抵抗は血液の流れにくさを表しています。
末梢血管抵抗は、血管の太さに関連し、血管が細くなると抵抗は増加します。
心拍出量、末梢血管抵抗が大きくなると、血圧も上昇します。
また、年齢とともに血圧値が上昇します。
それは、血管のしなやかさがなくなるからです。
血管のしなやかさが無くなると、血管抵抗が上昇します。
血圧は、血管を押し広げる圧力ですが、しなやかな血管はその圧力を和らげてくれます。
血管が固くなると、ダイレクトにその圧力を受け、血圧も上昇してしまいます。
最高血圧は、年齢+90mmHgだと言われています。
最高血圧は140mmHg以上でⅠ度の高血圧に分類されますが、50歳以上の多くがこれに該当することになります。
もちろん、あくまでも統計的な話で、全ての人が該当する訳ではありません。
食生活や運動習慣で、年齢を問わず健康的な血圧値は維持できます。
ただ、多くの方はそうはなっていないということです。
お風呂場での血圧の変動
冬のお風呂場では、血圧の変動が大きくなる場所の一つです。
血圧が高い中高齢者は特に注意したいですね。
中高齢者は血管が固くなっており、硬い血管は脆さも兼ね備えています。
ですから、血圧の変動で血管が損傷しやすい状況にあると言えます。
では、冬のお風呂場はなぜ血圧の変動が大きいのでしょうか?
それは、温度と姿勢の変化が大きいからです。
まず、脱衣所。
脱衣所は、一般的に温度が低く、立った状態で裸になります。
寒いと、体温を下げないために交感神経が作用して皮膚の血流量が低下します。
このような状況では血管抵抗が増加して、一時的に血圧が増加します。
次に、湯船。
湯船では、座った状態で、かつ温かいお湯に包まれています。
皮膚が温められると、皮膚の血流量が増え血管抵抗が低下するため血圧が下がります。
また、お湯につかっている状態では横になっている状態のため交感神経活動も低下します。
そして、洗い場。
お湯につかっている状態から立ち上がります。
この際、急に立ち上がると、血圧を急激に増加させなければなりません。
脳に血液が届かなくなってしまうからです。
そして、洗い場では、寒い状況で体を洗ってたりしますので、血圧が増加しやすくなります。
このように、冬のお風呂場では血圧の変動が大きくなってしまうのです。
急激な血圧の変動で、中高年の固くそして脆くなった血管が切れてしまうことも。
そのため、心疾患、脳血管障害が生じます。
また、急に立ち上がろうとしている際、血圧を適切に調節できないこともあります。
そうなると、脳への血流が一時的に滞り、立ちくらみや一時的な意識障害が生じ、溺死してしまうこともあるそうです。
お風呂場での事故
入浴中の心肺停止状態発生について検討したデータがあります。
内容をまとめると以下の通りです。
・2011年のデータで、全国で9360件発生
・年齢:65〜79歳で男性、80歳以上で女性が多い
・季節:冬に多く夏に少ない傾向で、12〜1月が最も多い
・都道府県別:北海道と沖縄県が発生頻度が低い
現在では、高齢者の数も増えています。
そして、今後も高齢者の数はますます増えていくことになります。
そのため、冬のお風呂場での死亡事故と言うのは、今後もますます増えることが予想されます。
都道府県別のデータを見ると、沖縄の発生件数が少ないことは想像できますが、北海道が少ないのは驚きました。
しかし、よく考えてみると、北海道では暖房施設が充実しており、室温が高いからなんですね。
逆に.環境の比較的穏やかな静岡や和歌山などで、発生件数が多いので注意が必要です。
お風呂場での死亡事故を減らすポイントは以下の通りです。
まとめ
- 冬のお風呂場は、温度・姿勢の変化が大きく、血圧の変動も大きい。
- 血圧の変動が大きいと、固く・脆くなった中高齢者の血管は損傷しやすい。
- お風呂場での中高齢者の死亡事故が増えている。
- お風呂場を快適な温度にし、姿勢の変化をゆっくり行うことで事故を少なくできる。
中高齢者になると、何事も「急な変化」には注意が必要ですね!
<参考資料>
- 「わが国における入浴中心肺停止状態(CPA)発生の実態 -47 都道府県の救急搬送事例 9360 件の分析-」、https://www.tmghig.jp/research/release/2014/0331.html
- 「お風呂の湯船にも危険 交通事故死よりも多い入浴中の死亡」、https://www3.nhk.or.jp/news/html/20221228/k10013936811000.html
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