運動強度として活用される心拍数

健康・運動

運動強度は、身体にかかる負担の程度を表す指標です。

どの程度の運動強度で運動を実施するかは、効果を出す上で最も重要な要因となります。

有酸素運動の運動強度は、運動中の酸素摂取量で表します。

でも、実際には酸素摂取量をモニターしながら運動を実践している人はいません。

酸素摂取量を計測することが難しいからです。

酸素摂取量に代わり、手軽に計測できる心拍数が活用されているのです。

では、なぜ心拍数が用いられているのでしょうか?

それは、酸素摂取量と心拍数が密接に関連しているからです。

ただ、心拍数は万能ではありません。

運動に関係しないことで心拍数が変化してしまうこともあります。

今回は、運動強度でなぜ心拍数が活用できるのか、また、心拍数を活用する上での注意点について、以下の内容で解説します。

  • 運動強度と酸素摂取量
  • 心拍数
  • 心拍数と酸素摂取量
  • 心拍数を利用する上での注意事項

運動強度と酸素摂取量

酸素摂取量は、運動をしている筋肉が使う(使った)酸素の量のことです。
有酸素運動の場合は、酸素を使って筋肉が動くエネルギーを作っています。

酸素摂取量が多いということは、それだけ筋肉が酸素をたくさん使って、頑張って動いているということになります。

つまり、運動の強さの程度と密接に関連してくるのです。

ただ、酸素摂取量の値そのままだと、他人との比較が難しくなります。

それは、酸素摂取量が身体の大きさによって異なるからです。

ですから、酸素摂取量は体重で標準化した値を用います。

もう一つ、酸素摂取量は個人の有酸素能力で最大値が変わります。

最大値のことを最大酸素摂取量と言います。

例えば、運動中の酸素摂取量が24 [mL・kg-1・分-1]で同じであっても、最大酸素摂取量が30 [mL・kg-1・分-1]の人と50 [mL・kg-1・分-1]の人では運動のきつさの感覚は全く違います。

前者の人の方がきつく、後者の人にとっては軽い運動と感じます。

ですから、最大酸素摂取量を基準にして、その何%かという相対値として運動強度を表します。

しかし、酸素摂取量を直接計測することは現実的ではありません。

酸素摂取量を計測するためには、高価な機器と専門家が必要です。

また、屋外で酸素摂取量を計測することは、一般の方が使用できるような機器は現状ではありません。

詳細は以下のブログを参照してください。

ですから、酸素摂取量に変わる指標が必要になります。

いくつか指標はありますが、最も精度が良く、簡易的な方法が心拍数を用いる方法です。

心拍数

心拍数は、1分間あたりの心臓の拍動数です。

最も手軽に計測できる生体情報の一つです。

機器を用いず、手首の内側の撓骨動脈や頸の頸動脈上の皮膚を触れて脈を計測することで測定もできます。

ただ、運動で心拍数を活用する場合は心拍計を購入することをオススメします。

安静時の心拍数は、60〜80拍/分ぐらいで、個人差が大きいです。

スポーツ選手、特に長距離選手では60拍/分以下で、30〜40拍/分なんて人もいるようです。

最高心拍数は年齢にのみ依存して、(220-年齢)で推定できます。

20歳で200拍/分、50歳で170拍/分という具合です。

あくまでも推定ですので、実際に計測するとそうならないことも多いです。

最高心拍数には、トレーニングの影響がないのが面白いですね。

心臓は、自律神経(交感神経と副交感神経)の支配を受けています。

交感神経が作用すると心拍数は増加、副交感神経が作用すると心拍数は減少します。

心拍数と酸素摂取量

酸素摂取量の代わりに心拍数が利用できる理由は、両者が密接に関連しているからです。(図1)

図1 酸素摂取量と心拍数の関係

酸素摂取量は、以下のように表すことができます。

 酸素摂取量=動静脈酸素較差✕1回拍出量✕心拍数 ・・・(式1)

    動静脈酸素較差…動脈と静脈の酸素濃度の差

    1回拍出量…心臓が1回の拍動で送り出す血液の量

この式からも、酸素摂取量と心拍数の関係の深さがわかりますね。

運動がきつくなれば酸素がたくさん必要になります。

酸素は血液に乗って筋肉に運ばれますから、心臓が頑張って動いて必要な酸素を供給しています。

ですから、「心拍数が増加すること=運動強度がきつくなていること」になる訳です。

心拍数を利用する上での注意事項

ただ、心拍数も万能ではありません。

以下の注意点があります。

  • 非直線性
  • 運動以外の要因
  • 個人差

非直線性

図1にあるように、酸素摂取量と心拍数は「ほぼ」一直線です。

ですが、あくまでも「ほぼ」です。

運動が軽いところと最大に近いところでは、直線でなくなります。(図1)

運動が軽いところでは、動静脈酸素較差と1回拍出量を主に増加させて酸素摂取量が増加します。

そのため、心拍数の増加は緩やかになります。

一方、最大に近いところでは、心拍数が頭打ちになります。

有酸素系以外の無酸素系エネルギーを加わってくることも関係します。

そのため、心拍数の増加は緩やかになります。

酸素摂取量と心拍数の関係は、最大酸素摂取量の30%〜80%の範囲で直線だとみなせます。

普段、私たちが健康づくりで心拍数を活用する上ではこれらの関係は直線と扱って問題ありません。

運動以外の要因

心臓は、自律神経で調節されています。

ですから、緊張など情動の変化で心拍数も変化することは注意しましょう。

運動が軽いところでは、特に影響が出やすいです。

また、疲労が溜まっている、体調が悪い時も心拍数が変化します。

これも自律神経が原因です。

ストレスで体調不良とか、仕事が立て込んで疲れが溜まっている時には、普段と同じスピードで運動していても心拍数が高いことも。

心拍数を評価する時には、以上の点に注意したいですね。

個人差

心拍数は、個人差が大きいです。

安静時心拍数は、60〜80拍/分が一般的です。

これだけ見ても、20拍/分も幅がありますし、これよりも高い心拍数の人もいます。

熱があったりと体調不良で安静時の心拍数が高い場合もありますが、その人固有の値であることも多いです。

このことは最高心拍数でも同じことが言えます。

心拍数を用いた運動強度の考え方は、このような一般から外れた数値を持つ人には当てはまらないことも多いです。

考え方は同じですが、適用の仕方を工夫する必要あります。

この場合は、スポーツ科学の専門家、スポーツに詳しい医者に相談することをオススメします。

まとめ

  • 有酸素運動の運動強度は、最大酸素摂取量の相対値として表す。
  • 酸素摂取量の計測が難しいため、これと直線的な関係にある心拍数が活用されている。
  • 酸素摂取量と心拍数の関係が非直線的なところもあるが、健康づくり運動で心拍数を活用する範囲においては直線として扱える。
  • 運動強度を心拍数で活用する場合、運動以外の要因、個人差の影響を考慮する必要がある。

<参考資料>

  • 健康運動指導士養成講習会テキスト、2016
  • 運動処方ー理論と実際ー、池上、1991

コメント

タイトルとURLをコピーしました