ストレッチってどんな効果があるんですか?
身体にいろいろ良い効果を及ぼしますが、最近では血管への効果も報告されています。
ストレッチは、正式には「ストレッチング」と言います。
ここでは、馴染みのある「ストレッチ」として話を進めます。
ストレッチの一般的な効果としては、以下のものが挙げられます。
最近、高齢者がストレッチを実践することで動脈がしなやかになることが報告されています。
動脈硬化は高血圧発症にもつながるものですから、朗報ですよね!
今回は、ストレッチが動脈の硬さに及ぼす影響について以下の内容で解説します。
- 動脈スティフネス
- 柔軟性と動脈スティフネス
- ストレッチと動脈スティフネス
- ストレッチと血流量
動脈スティフネス
動脈スティフネスという言葉は聞き慣れないですね。
スティフネスは、硬さのことです。
すなわち、動脈スティフネスとは動脈の壁の硬さのことで、動脈硬化度の指標として用いられています。
心臓から送り出された血液は、波のように伝わっていくので「脈波」と言います。
動脈スティフネスは、脈波の伝わる速さである脈波伝搬速度から評価されます。
動脈の離れた2点で脈波が到達した時間を計測して、その差を計算します。
あとは、2点間の距離をかかった時間で割ることで、脈波伝搬速度が算出されます。
動脈の壁がしなやかであると、脈波は吸収されゆっくりと伝わります。
逆に、動脈の壁が固くなると、脈波が速く伝わります。
「しなやか」というのは、弾力があるということです。
弾力とは、力が加わると伸び、それがなくなると元に戻ろうとすること、すなわちゴムのような性質です。
健康な人の動脈の壁は、しなやかです。
ですので、脈波伝搬速度が低くなり、動脈スティフネスも低くなります。
一般的に、加齢とともに動脈スティフネスは高くなります。
動脈スティフネスが高まると高血圧のリスクも高まるため、健康に関する重要な測定指標になっています。
柔軟性と動脈スティフネス
最近、高齢者において柔軟性と動脈スティフネスの関係性が明らかにされています。
すなわち、柔軟性の低い人は動脈スティフネスが高く、柔軟性の高い人で動脈スティフネスが低いというものです。
柔軟性と動脈スティフネス、かけ離れているように見える両者がつながっているなんてびっくりですね。
ただし、この関係性は高齢者でのみ見られ、若年者や中年者では関係性はないようです。
加齢とともに柔軟性は低下します。
40〜50歳ぐらいから、そして肩や体幹で顕著に低下していきます。
そして、この柔軟性の低下が、血管の硬さに影響を与えるらしいのです。
柔軟性は、一般的に男性の方が低いですよね。
ですので、動脈スティフネスも男性が高くなります。
ストレッチと動脈スティフネス
柔軟性が低いことと動脈スティフネスが高いことに関係性があります。
では、ストレッチをして柔軟性を高めるとどうなるか?
そう疑問に思う方も多いと思います。
実際にそれを検討した研究もあります。
これらの研究では、静的ストレッチを継続させると、動脈スティフネスが低下することが報告されています。
「静的ストレッチ」とは、反動などをつけずに、ゆっくり筋肉を伸ばしていくストレッチです。
ストレッチと血流量
では、どうしてストレッチで動脈スティフネスが低下するのでしょうか?
これについてはまだよくわかっていないようで、まさに日々研究されているところです。
ただ、仮説として次のようなものがあります。
ストレッチによって血管内の血流量が増え、これが血管内皮細胞に作用し、一酸化窒素を生じさせたのではなかというものです。
血管内皮細胞とは、血管の内側にある細胞で、近年、一酸化窒素を産生することで有名になりました。
血流の増加によって、この血管内皮細胞に摩擦ストレスが加わったことが、一酸化窒素の産生につながるのです。
この一酸化窒素は、平滑筋という血管にある筋肉に作用し、平滑筋の緊張を和らげ、血管を広げるように作用します。
結果的に、動脈スティフネスが低下するという訳です。
この血流の増加は、ストレッチ中ではなく、ストレッチとストレッチの間の休息時間に起こります。
ですので、休息時間をどのくらい取るのかも、一酸化窒素を産生する上で大切になります。
これまでの研究では、どうも休息時間が短すぎると動脈スティフネスへの効果が減ってしまうようです。
20秒程度の休息時間で動脈スティフネスの効果は確認されているようです。
しかし、最適な休息時間は今後さらに検討されていくことだと思います。
今回は、動脈スティフネスを脈波伝搬速度で評価した研究結果の内容で、この指標は他にもあります。
また、ストレッチの効果についても、一酸化窒素以外の他の要因もあります。
まだ新しい研究ですので、今後、さらに詳しく検討されていきます。
健康に役立つ、多くの情報を期待したいですね。
まとめ
- 動脈スティフネスとは、動脈の壁の硬さであり、動脈硬化度の指標として用いられている。
- 動脈スティフネスは、動脈内を脈波が伝わる速度である脈波伝搬速度から評価できる。
- 加齢とともに動脈スティフネスは上昇し、さらに高齢者では柔軟性が低下するとこの値も上昇する。
- ストレッチを実践することで動脈スティフネスが低下する。
- ストレッチによる血流量の増加が、血管内皮細胞から一酸化窒素を産生し、これが平滑筋の緊張を緩めることで動脈スティフネスが低下すると考えられる。
動脈スティフネスは、有酸素運動でも低下させることができます。
ストレッチでも有酸素運動でも、血液の流れを速くすることで血管に刺激を与えているのです。
なかなか運動ができない人は、まずはストレッチから始めてみてはいかがですか。
ストレッチについては、以下のブログも参照下さい。
■参考
- 第77回日本体力医学会大会、シンポジウム13、2022
コメント