最近、疲れやすくなった、肌のはりが無い、白髪、シワ、シミが増えた・・・
そんなことを感じている方も多いのではないでしょうか?
私たちの身体は、20〜30歳をピークに、容姿や身体のいろいろな機能、体力が低下してきます。
最近では、「アンチエイジング」なんていうことばをよく聞きます。
しかし、時間の流れは止めることができません。
一方で、老化の変化は、個人差も大きく、中高齢者でも若者と変わらない体力を持っている人もいます。
遺伝的な要因もありますが、日々の食事や運動によっても身体機能や体力の低下スピードをゆっくりにすることはできます。
今回は、老化によって私たちの身体機能や体力がどのように変化するのかを以下の内容で解説します。
- 身体機能の変化
- 体力の変化
- 個人差
身体機能の変化
年齢とともに、いろいろな機能が衰えてきます。
図1は、30歳の生理機能を100とした時、各年代での各機能の相対値を示した図です。
この図が示している通り、30歳以降、全ての機能が右下の方向へ低下していきます。
しかし、低下のスピードは機能によって異なるようです。
体力との関連が深い、呼吸循環器系と神経・筋系について見てみましょう。
呼吸循環器系
呼吸器関連では、肺活量と最大呼吸量が著しく低下しています。
肺は、それ自体が動いている訳ではありません。
呼吸筋と言われる、肺の周りの胸郭(肋骨など)にくっついている筋肉が動くことによって肺は動いているのです。
老化することで、肺の組織や胸郭の柔軟性が低下します。
さらに呼吸筋の能力の低下も生じます。
このため、肺が大きく広がったり縮んだりできなくなってしまうのです。
このような変化のため、中高齢者では呼吸が浅くなる傾向にあります。
呼吸が浅くなると、呼吸本来の目的である酸素と二酸化炭素を交換する能力も低下してしまいます。
一方、心臓については心係数など心臓の機能が低下します。
心臓が1分間に動くことのできる限界の回数を最高心拍数といいます。
この最高心拍数は(220-年齢)と、年齢とともに最大値が少なくなってしまいます。
ですから、最高心拍数が年齢とともに低下するということは、心臓から送り出せる最大血液量が低下することを意味します。
血液には、運動に必要な栄養や酸素が含まれていますので、この量が減少することは運動の最大パフォーマンスが低下します。
神経・筋系
神経伝導速度は神経を命令が伝わるスピードをあわらしています。
脳での判断処理能力が老化で低下することは想像できますが、神経細胞が命令を伝えるスピードまで低下するんですね。
図1では筋の機能については示されていません。
しかし、基礎代謝率が筋肉と関連しています。
筋肉は安静時でもたくさんのエネルギーを消費するので、基礎代謝率の低下は筋肉量の低下が原因だと思われます。
50歳以降は毎年1〜2%もの骨格筋量が減少すると言われています。
これはサルコペニアと呼ばれています。
サルコペニアについては、以下のブログを参照してください。
体力の変化
このような身体機能の低下は、体力とも強く関連してきます。
図2は、20歳の体力を100とした時、各年代での体力の相対値を示した図です。
30歳以降、閉眼片足立ちの時間が著しく低下しています。
目を閉じ片足で立った状態でどのぐらいの時間維持できるかを時間で計測します。
バランスの能力を判断するものになります。
次に、脚筋力に注目してみると、握力と比べ脚筋力の低下が著しいです。
人間は脚から衰えるとはよく言ったものです。
さらに、全身反応時間から判断力のスピードを知ることができます。
このテストは、目の前にあるライトが光ったら跳び上がるという簡単なテストで、ライトが光ってから跳び上がるまでの時間を計測するものです。
図1で見た神経伝導速度の低下も関連しますが、この測定では脳での判断力も加わるので、低下が顕著になります。
ここで取り上げた、脚の筋力、バランス能力、判断力は、ずばり「転倒」に関わる要因です。
高齢者で、これらの能力が低下することは、転倒のリスクが高くなることを意味しています。
最大酸素摂取量も30歳以降、減少していきます。
この値は、どれだけ酸素を体内(筋肉)に取り込めるかを表したものです。
大切なのは、この値が生活習慣病とも密接に関連していることです。
つまり、最大酸素摂取量が低いと、生活習慣病のリスクが高まるということです。
このため、健康づくりのための健康基準2006(厚生労働省)では、生活習慣病の予防となる最大酸素摂取量の基準値が示されています。
この目標値は維持したいですね。
30歳代 | 40歳代 | 50歳代 | 60歳代 | |
男 | 38 | 37 | 34 | 33 |
女 | 32 | 31 | 29 | 28 |
個人差
体力の個人差は年齢とともに広がっていくことが知られています。
つまり、20〜30歳代よりも、それ以降の年齢では個人差が大きくなります。
ですから、図1、図2で見てきたデータは、全ての中高齢者に当てはまる訳ではありません。
もちろん、老化現象は止めることができませんので、全ての身体機能、体力は老化で必ず低下します。
しかし、定期的な運動を実践することで、その低下のスピードを緩やかにできるのです。
身体機能や体力を良い状態に保つことは、生活の質(QOL)に大きく関わってきます。
楽しく充実した生活を送るためにも、運動を実践・継続したいですね!
まとめ
- 30歳以降、身体の様々な機能が低下する。
- 体力においても、30歳以降低下していく。
- 脚の筋力、バランス能力、判断力の低下は転倒のリスクを上げるので、高齢者は特に注意が必要である。
- 最大酸素摂取量も老化で減少していくが、生活習慣病の予防となる目標値を下回らないようにする必要がある。
<資料>
- 瀬尾、「加齢による身体機能の変化」、Dokkyo Journal of Medical Sciences、2017
- 健康運動指導士 養成講習会テキスト
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